ベース音の聞き分け | スガ シカオという生き方 ~history of his way~

スガ シカオという生き方 ~history of his way~

1997年デビュー、2011年フリーランスとなった音楽侍スガシカオさんの記録。
本名:菅 止戈男。戈(ほこ)を止める=争いを止めることが「武」の本義であるという孔子の著から取られた名前に込められた思い、それに恥じない生き方の足跡。


BREaTH Vol.3  1997年12月発売 
(デビューが1997年2月なのでまだ1年経ってない頃)

あの胸が張り裂けそうな歌声を初めて聴いた瞬間に、この人は大きな宿命を背負った悲しみのヒーローだと思ったが、ラジオ(木曜深夜アクロスザビューJ-WAVE)を聞いて、その考えはすっかり改められた(笑)でも、デビューアルバムの全編を貫くエッジの効いた“クール&エゴイスティックなまでの孤独感”が彼の内面を映し出していないはずがない。
まだまだ人生はやり直せる。
30代にとってはそんな希望もくれた期待の星、スガシカオの底なしのパワーと音楽におけるそのセンスの秘密を探るべく、会話はスタートした。

―以前は、会社に勤めていたそうですが。

スガ「イベント制作の会社だったんですが、自分で企画書書いて、それで営業に回って売って、実際の工事まで責任を持つという。

でもね仕事は辞めるまでずっと楽しかったんです。ミュージシャンになるよりもずっと自分には向いてたんですよ。苦労しないで仕事もとってきて、仕事もこなせたし。同期の中でも一番出世が早かったくらいですから。よく勘違いされるんですが、仕事が嫌で辞めたとかじゃなくて、それよりも音楽がやりたかっただけなんですよ。
デビューが決まって会社を辞めたわけじゃないんで。無謀と言えば無謀なんですけど。僕は思い込みが激しいんですよ。きっかけなんて何もないんですよ。作品がたまってきて、ある程度までのレベルにきたら、ああイケるなと思い始めたら、あんまりいろんな事考えないでとまどわないで会社とか辞めちゃったり出来る人なんですよ。
だから本当にきっかけなんて何もない。あるとすれば、、仕事がひと段落ついて、ココだっー!今だっー!って(笑)」

「とにかく、ずる賢いガキでしたね。周囲に同年代の子供がいなく、大人の環境の中で育った事もあって、ずる賢い知恵ばかり持っていた子どもだったと思いますね。
大人の顔色をよく見ていたような気がします。他人との揉め事が嫌いだったんですよ。
でも、それって相手の事を考えてやってることでもないし、自分の為だったんじゃないでしょうか。
小学生の時、学校の先生でもウマが合わないと、困らせるような事ばかりしてて、母親が先生に呼び出されて、先生に「助けて下さい」って、言われたらしいんです。 
でも、それより、「今スガくんを、ポッと世の中に出しても僕よりもうまく生きていけますよ。」って、言われた事が物凄くショックだったらしくて、そっちを怒られましたよ。(笑)」



「努力が嫌いなんですよ。だから楽器も次から次へと始めちゃあ、適当に弾けるようになったらやめるんです。だから色んな楽器が弾けるように見えるんですよね。
だから、たぶん努力しないで、上っ面だけでやっているとヘタウマになるんですよ。
センスがあって努力しないとヘタウマになる。
僕、絶対人がマネできないリズム感覚を持っているんで、そこを使って楽器をプレイしているだけなんです。
たとえば、ベースなんてボーンと弾いてから、何千分の一秒伸ばすか伸ばさないかでノリが決まっちゃうじゃないですか。その何千分の一秒をピタッと当てられるんです。その感覚だけはあるんで、それで全て作ってる。 だからベースの上手い下手は、すぐ聞き分けちゃう。凄く指が動いててもリズムの切り方が下手だと、グルーブの作り方が下手だなぁって思ったり。逆に凄い下手でも、この人凄くリズムいいなぁって言うのも気づいちゃう。

努力して凄いプレイヤー?ないと思います。絶対努力しないから。(笑)
ギター、ベース、ドラム、キーボード、あとサックスもやりましたね。」


(別冊カドカワ2007年スガシカオ総力特集にて、タレントの恵俊彰さんに、
「スガシカオさんは、俺、勉強してない!と言いながら、絶対勉強してる人ですよね。」と言われていたように、努力はしてもけしてそれを他人には見せない人だと思う。)