さて、出産をした。

もちろん母子同室を希望した。

大部屋なので気も引けるが、みんな同室で自分のことに必死だ。


わたしが入れられた大部屋は、わたしが入って満室。

夜、初めて行った授乳室は、人がわんさかいる。

わたしは、けっこう大きい産婦人科だし、こんなもんなんだろうと思っていた。

人が多ければ誰かと話をすることもあるだろうなんて考えたり。


ところが、違った。


人が多すぎて、会話ができない。

授乳室もイスの取り合いで、終わったら早く出て行かなくては迷惑になる。

授乳の時間以外は休んでいたり、どこか診察に行っていたりで出会うことも声をかけることも少ない。

昼食を面会用の談話室でみんなでできます、と言われたが、

一握りの仲良しの人たちが集まっているかと思うと、

なんとなく出来上がった輪の中にイキナリ入る自信もない。


悶々と過ごした。

特に生後二日目は、夜にわけもなくベビ子が泣き、

授乳室にこもりっきりになったり、部屋に帰っても泣いてばかりで、

不安でオロオロして、精神的にしんどかった。

病院の看護師さんたちも母乳育児推進、推進な人たちで、


「さっきから何回も授乳してるんですけど泣いちゃって・・・

 乳首も切れていたいんです」


と言おうとも、絶対にミルクを与えてくれない。

(のちにこれは人によるもので、わたしは当たった人が悪かったことがわかるのだが)


「搾ってみましょうか」

とおもむろに小さな計量カップを出される。

やっとの思いで10mlほど搾る。

そして哺乳瓶ではなく、その飲ませにくいミニ計量カップで飲ませろという。

たしかに、哺乳瓶の乳首に慣れさせないのは大切だと思ったけど、

ほかの人は搾乳器だって哺乳瓶だってつかわせてもらっているのに。

なんでわたしだけ。

24時間が永遠のように感じた。


ヘロヘロになっていたら、珍しく人数の少ない授乳室で、

同室の人に話しかけられた。

「お隣なのに、なかなか部屋では話せないね」

「しんどかったらあずけたらいいねん!ここでしか預けて休んだりできないんやから。

 このおっぱいで寝たら、ベビー室に預けてちょっと寝たほうがいいよ!」

その一言にほっとして、涙が出た。

看護師さんの言ってくれなかったひとことを、おとなりさんが言ってくれた。


部屋でベビ子が泣き出しても、

「泣かしときー!わたし起きてるから大丈夫よ!」

とカーテン越しに声をかけてくれたり。


わたしの入院生活は、その人ありきである。



その人に聞くと、わたしがベビ子を産んだ前の週(ベビ子は木曜日生まれなので前の週の週末)、

産院は出産ラッシュだったそうだ。


ボンボン生まれるので、LDRから病室が空くのを待って出られない人もいたとか。

予定日から遅れている人も、

「もうちょっと遅れてくれていいよ!」なんてスタッフに冗談言われるほど。

わたしが出産した直後も、個室は満杯です、と言われた。


お隣の人も、帝王切開だったのに即日母乳指導をツメられて、

「こんなスパルタなとこないわ!」

とちょっとお怒り。


たしかに厳しい母乳指導だった・・・

精神的に疲れているときに、母乳もそれに伴って出ず、

しょうがなく足してもらった以外はすべて完全母乳。

3日目、4日目くらいから順調に母乳が出始めて、

胸も張るようになった。

授乳の息がベビ子と合うようになってくると、

驚くほどベビ子はよく眠る子だとわかった。


すると現金なもので、やっとわたしにも心の余裕ができてきた。


出産ラッシュの人たちがどんどん病院をあとにする。

ついに部屋にはわたし一人になった。

お世話になったお隣さんを送り出し、夜まではなんだかポカンとすごした。


夜になると、新しい産婦さんが続けてふたりやってきた。

はじめはどうしていいかわからなかったけど、

何度も泣くわが子に、申し訳なさそうにしてる新しいお隣さんを見て、


「うちの子が泣いたとき、隣の人に励ましてもらって。

 不思議と自分の子の鳴き声でしか起きないし、いっぱい泣かしてあげてね」


と初めて声をかけた。

夕食はカーテンをあけて3人で話しながらとるようになり、

やっと昼食も談話室で食べれるようになった。


ふたりともすごいご近所さんだとわかり、

地元トークで盛り上がった。



人があふれていて、スタッフも殺伐としていたんだな、

と、退院のころになってわかった。

みんなが冷たい、と思っていたのは、

面倒を見てもらえる比率が少なかったのだった。

入院産婦が減ると、慣れもあって、すっかりかまってもらってしまった。


でも、最初の一番しんどかったときに、丁寧にしてもらえなかったのは悲しかった・・・。



しかし、ベビ子は日に日によく頑張る子になった。

いや、生まれた時から絶対頑張っているんやけど、

その頑張りに母のわたしがうまく答えられていなかった。


おっぱいを飲むのも上手になり、

ものすごいいきおいでバブーーン!!とオナラをし、快便だ。

無駄に泣きはしない。

というか、入院中は序盤以外はほとんど泣かなかった・・・。


さらに退院前日の沐浴教室で、ベビ子をモデルにしたいと看護師さんに言われた。

わたしはロクにやり方も聞かず、買いたてのi Phoneで動画ばっかりとっていた(笑)

沐浴中も一切泣かず、気持ちいい~といわんばかりの顔で沐浴終了。


「だいたい泣かれるんですけどね~」


なんと空気の読める娘か!と親バカするも。

余談、家に帰ってからわかるのだが、ベビ子は単なる風呂好きであった。

風呂の時間はいつでも目が輝いており、一番気持ちいいときは、

唇をとがらせて「ホゥ・・・」と息を漏らして恍惚の表情をするのである。


けっこう愛想がいいので、人が減ってからはベビ子もよく看護師さんに声をかけられ、

授乳室でのほかのママとのコミュニケーションも増えた。

退院するときには、つらかったのがウソのようでした・・・。


まあでも、あの厳しい母乳指導のおかげで、いまもガッツリ母乳です。

厳しいとはいえアフターケアはしっかりしてくれる。

よく考えたらゴハンもおいしい病院だった。

料金は高かったけどね・・・。


そんなこんなで退院して、いまはご近所さんのママと育児相談しながら仲良くやってます。