相続登記のご依頼で、たまに建物の登記が表題部だけのケースがあります。
(「権利部」の登記がまだ何もされていない状態)
↓表題部だけの登記の例↓
↓権利部の登記がされた例↓
不動産登記法第74条1項1号によると、区分建物でない不動産に関する所有権保存登記は、「表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人が申請できる」と規定されています。同条1項2号、3号に別規定もありますが、この規定に基づいて登記手続するケースが大半です。
<事例>
被相続人 A
相続人 B、C
相続人でない人 D
例えば、表題部所有者がAであれば、BC名義の所有権保存登記を申請することができます。もし、BC間で遺産分割協議が整い、Bが単独で相続する場合は、B名義の所有権保存登記を申請することができます。
Aが生前にDに対して本件建物を贈与していたようなケースだと、A名義の所有権保存登記を申請(←BCが申請)したうえで、AからDに対する所有権移転登記を申請する流れになります。(いきなりD名義で所有権保存登記を申請することはできません。)
さて、本記事のタイトルの話に戻ります。。
依頼された内容は、”表題部所有者がABCの共有(持分は各1/3)になっていて、Aが亡くなり、BCによる遺産分割協議でAの持分はBが相続することになった”、というものでした。この場合の所有権保存登記の話です。
※実際の事例からは改変しています。
不動産登記法第74条1項1号により、BC名義で所有権保存登記を申請することができることは明らかなのですが、Bの持分は2/3(Aから相続した持分1/3と、元々の持分2/3の足し算)、Cの持分は1/3となるので、申請書にはこれをどう記載すればよいのか…少し迷いました。
結論としては、以下の記載で申請してみたところ、そのまま登記は完了しました。
登記の目的 所有権保存
所有者 (被相続人 持分3分の1につきA)
持分3分の2 B
持分3分の1 C
法74条1項1号申請
⇒登記記録にはシンプルに以下の通りに記載されます。
共有者 持分3分の2 B
3分の1 C
以上は、単なる登記申請書の記載の話に過ぎないのですが、オンラインによる方法で登記申請すると、登記申請書の内容がそのまま”登記完了証”(依頼者にお渡しする書類の一つ)に転記されるので、意外と気を遣いますね。
※書面で登記申請する方法だと、”登記完了証”には、申請書の内容は一部しか転記されません。
ちなみに、この登記、制度上はBCのうち1名からの申請でも申請することは可能なのですが、実務上は原則としてBC(名義人となる全員)からの申請でやります。もし、Cは不動産を相続しないからといって、Bだけで申請してしまうと、Cの登記識別情報は発行されませんのでご注意を。
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司法書士 黒川雅揮
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