不動産登記手続における

「相続による所有権移転」登記の時の添付書類の話です。

 

 

所有権の移転の登記には、

権利を取得する者の”住所”を証明する書類(情報)が必要とされています。

(これを、”住所証明書(住所証明情報)”と言います)

 

※住所証明書の添付が要求されている趣旨は、

 「正確な住所氏名の証明」と「実在性の証明」だと言われています。

 

※一般的には、「住民票」や「戸籍の附票」(個人の場合)です。

 (「印鑑証明書」でもOKです。)

 

※会社の場合は、「会社の登記事項証明書」や「会社等法人番号」等です。

 

 

 

さて、ここで本題。

 

成年被後見人が不動産を取得する場合に、

「後見の登記事項証明書」は、住所証明書としても使えるか??です。

 

 

 

先日、成年被後見人が不動産を相続する案件があり、

成年後見人の方から相続登記のご依頼を頂きました。

 

※成年被後見人が不動産を取得した旨を登記申請する場合、

 成年後見人が法定代理人として手続を行います。

 

 

まず、成年被後見人と成年後見人の関係を証明するために、

「後見の登記事項証明書」は必ず準備してもらいます。

(これを、”代理権限証明書”と言います)

 

続いて、成年被後見人の住所証明書として、

「成年被後見人の住民票」の取得をお願いしようと思ったときに、

 

ふと、この「後見の登記事項証明書」は、

「成年被後見人の住所証明書」としても使えるのではないか???

と思ってしまったわけです。

 

※そうすれば、わざわざ、成年後見人に、

 成年被後見人の 「住民票」を取得してもらわなくて済むかなと。

 

 

 

そこで、一応、条文(不動産登記令別表)の記載内容と、

「後見の登記事項証明書」の記載内容を確認したところ…

 

【不動産登記令 別表(抜粋)】

登記名義人となる者の住所を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)

 

【後見の登記事項証明書見本(法務省HPより抜粋)】

 

 

成年被後見人の住所・氏名が記載されているし…

かつ、公務員(登記官)が作成した証明書だし…

 

これは問題無いのではないか、と考えて、

住民票を添付せずに、登記を申請してみました。

 

 

 

 

結果は、、、

 

 

ダメでした。

 

法務局の回答は、

「後見の登記事項証明書は、代理権限証明書にしかなりません。

 住所証明書としては使えません。」とのこと。

 

 

 

理由は、以下の2点。

 

(1)後見の登記事項証明書は、たしかに登記官が発行しているが、

 条文上の「登記官が作成」とは、会社の登記事項証明書等を想定している。

 

(2)後見の登記記録を作成する際に住民票は確認していないので、

 これが住民票の記載通りに正確かどうかは分からない。

 (家庭裁判所が発行した選任審判の書類をみて登記しているだけ)

 

 

 

残念ながら、これ以上、調べものをする時間が無かったので、

おとなしく「住民票」を取得して添付しましたが、

 

とくに(2)については、そもそも「後見の登記事項証明書」は、

当事者双方の住所・氏名・生年月日が正確に記載されているからこそ、

意味がある証明書だと思っていたので、

 

いまいち不完全燃焼なまま、登記が完了してしまいました。

 

 

とはいえ、

例えば、他にも不動産を持っている方が、

新たに不動産を取得して登記を申請する際に、

 

「自分の住所・氏名が登記された不動産の登記事項証明書」を

「住所証明書」として使えるわけではないので、

 

これと似たような話だといわれると、

なんだか納得できるような気もしてきます。

 

 

成年被後見人が登記名義人となるケースは意外と少ないですが、

また機会があったら、もうちょっと調べてみようと思います。

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司法書士 黒川雅揮

司法書士黒川雅揮事務所HP⇒https://k-legal.jp/

 

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