先日、久しぶりに登記申請の取下げをしました。
おそらく、一般の方が想像しているよりも、
司法書士が登記申請を取下げすることは少ないです。
私の事務所では年に1回あるかないかくらいです。
あるとしても、
殆どがお客様側の事情による取り下げで、
例えば…
・謄本が必要になったから取り下げて欲しい。
(登記中は謄本が取れません)
・やっぱり役員をもう一人追加しておきたいから、いったん取り下げて欲しい。
(まとめて同時に申請すると、登録免許税が一回分で済みます)
というようなケースが考えられるでしょうか。
※もちろん、司法書士側のミスによる取下げもゼロではありません。
私が過去にやってしまったのは、
申請用ソフトの操作ミス(連件の順位設定ミス)でした。
さて、今回は、オンラインで登記を申請した直後に、
諸事情により、いったん取り下げて欲しいと相談されたケースでした。
取下げの要望を頂いた時点での状況は次の通り。
・オンラインで登記申請は送信済みで、法務局側の受付は完了。
・添付書類はまだ私の手元にある。
・登録免許税はまだ納付していない。
※まさにこれから登録免許税を納付しようとしているところでした。
(ネットバンキングにログインしたばかりの瞬間での取下依頼)
ここで問題になるのは、この取下げの理由が
A「申請意思の撤回のため」なのか、
それともB「書類補正のため」なのか、ということです。
前者(A)だと、委任状を提出する必要がありますが、
(改めて登記申請用の委任状は貰い直す必要があります)
後者(B)だと、委任状は不要で、
取下書を送信するだけで済みます。
で、管轄の法務局に相談したところ、
もし、いますぐ取下げしたいのであれば、
「申請意思の撤回」として委任状が必要になります。
(仮に、後日、申請し直すつもりがあったとしても、)
もし、登録免許税の納付期限が切れるのを待ってからでもいいなら、
「書類補正のため」として取り扱うことができます。
(もちろん、後日、申請し直す予定があるのであれば)
との回答でした。
ということで、今回は、諸事情を考慮して、
後者の方法(書類補正のため)で取り下げることにしました。
※理屈としては、
「”登録免許税の納付が無い”ことは却下事由に該当するので、
補正すべき申請といえる」ということでしょうか。
ちなみに、不動産の登記の場合は、
登記申請情報を送信した日の翌日から1日です。
(商業登記の場合は、登記申請情報を送信した日の翌日から3日です。)
ということで、無事に「委任状」を手元に残すことができたので、
あとは、諸事情が解消されるのを待つのみです。
※令和4年6月15日追記↓
SNS上の反応(司法書士・法務局関係者と思われる方々)をみると、
取下げにおける委任状の要否については、
最終的には、”登記官の判断次第”によりそうです。
”登記官の判断”とは、
そのケースが、申請意思の撤回に該当するのか、
それとも書類補正のために該当するのか、の判断という意味です。
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司法書士 黒川雅揮
司法書士黒川雅揮事務所HP⇒https://k-legal.jp/