現状、会社の設立登記といえば、

申請自体はオンラインで申請するものの、

添付書類の殆どは紙で提出する、という方法が一般的かと思います。

 

 

先日の法改正によって、

登記で使える電子署名の幅が広がりまして、

 

さくっとマイナンバーカードで電子署名できる方にとっては、

いざ、一人で会社を作ろう、となった場合に、

添付書類を全て電子文書(PDF)で作成する、

といったことが簡単にできるようになりました。

 

※例えば、デジタル業界に詳しい方や、

 e-taxで自分で確定申告を毎年やってきたような方でしょうか。

 

 

 

先日、株式会社の設立登記を、

全て電子文書で進めようとした案件がありまして、

具体的なオペレーションについて細かく検討する機会がありました。

 

最終的に、諸事情により、

やっぱり添付書類は紙で準備することになったのですが、

わりと細かく検討はできたと思います。

 

そんななかで、

私なりに気を付けたいと思った点を3つ紹介します。

 

 

1、マイナンバーカードの有効性、電子署名について

 

電子文書で準備を進める前段階として、

司法書士側では、まず最初に次の2点を確認すべきかと思います。

 

①マイナンバーカードが有効なものかどうか

 ⇒日司連のアプリを利用すれば、その有効性を確認できます。

 (遠隔の場合、お客様にアプリをダウンロードしてもらい、

 司法書士側の受付番号を入力してもらう必要があります)

 

②実際に電子署名が可能かどうか

 ⇒実際にPDFに電子署名して送ってもらいます。

  ついでに、日司連のアプリで、①の電子証明書との一致も確認しておきます。

 

※4桁の暗証番号(住民票等を取得するときのパス)は覚えているけど、

 電子署名用のパスワードを覚えていない、というケースもあります。

 

※カードリーダーを接続しようとしたけど読み込めない、

 何らかの理由でICチップが読み込めない、

 PDFに電子署名するソフトがインストールされていない、

 といった機器やソフト面で手続できないケースもあります。

 

 

”設立登記”に必要な書類については、

とりあえずこの2点の確認ができれば、

これまで紙だった書類をPDF化してメール等で送って、

お客様側で電子署名を施して返送してもらうだけでOKです。

 

 

 

2.文書の修正ができない点について

 

当たり前の話なのですが、

”電子署名された文書は修正ができない”

ということに改めて考えさせられました。

 

事前チェックは、これまで以上に慎重にすべきです。

(今まで、捨印にどれだけ助けられてきたことか)

 

※定款認証の場面において、私の場合、

 定款作成の委任状(紙)に署名捺印をもらった後(内容が確定した後)に、

 公証人に連絡して、定款内容を確認してもらっていましたが、

 

 定款作成の委任状(PDF)を予定している場合は、

 先に公証人に内容を確認してもらったうえで、

 定款作成の委任状(PDF)に電子署名してもらうべきかと思います。

 

※もし、電子文書に誤記があった場合は、

 改めて、お客様に電子署名し直してもらう必要があります。

 

 

 

3.会社の印鑑について

 

会社の印鑑を届出するかどうかは任意になったものの、

現実的には、印鑑届出は必須だと思っています。

 

印鑑届出自体は、オンラインで申請することも可能になりましたが、

結局、この部分は、「紙」も利用して進めた方が良いと思いました。

 

(1)法務省HPにある印鑑届出様式をダウンロードする

(2)この様式を、原寸大で紙に印刷する

(3)これに実際に、会社の印鑑を鮮明に捺す

(4)原寸大でスキャン(それなりの解像度)してPDF化する

(5)これに電子署名する

 

という作業になるのですが、はっきり言って、

これをお客様側で実践してもらうのは無理があると思います。

 

(1)(2)の作業は司法書士側で済ませ、

お客様には「紙」の状態でお渡しし、お客様に捺印してもらったものを、

(4)司法書士側でスキャンする、流れにせざるを得ないかと思います。

 

 

または、もし、印鑑証明書(紙)を別途準備できるのであれば、

印鑑届出については、「紙」申請にする方法もアリかもしれません。

 

※ちなみに、印鑑カードを交付してもらうには、

 紙の「印鑑カード交付申請書」が必要なので、

 紙でのやり取りがここで最低一回は発生します。

 

※マイナンバーカードと電子署名で本人確認できる話と、

 犯罪収益移転防止法による本人確認は別の話なので、

 結局のところ、どこかで面談か郵送は必須となります。

 

 印鑑関係は、「紙」でやると割り切った方がスムーズかもしれませんね。

 

 

 

 

また、今度、

機会があればチャレンジしてみます。

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司法書士 黒川雅揮

司法書士黒川雅揮事務所HP⇒http://k-legal.jp/

 

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