不動産登記の話です。
不動産登記においては、
「住所」と「氏名」で個人を特定しています。
なので、
引越しして住所が移転したり、
結婚・離婚・養子縁組等で名前が変わったりして、
現時点で登記されている住所・氏名と、
登記申請時の住所・氏名が異なる場合には、
原則として、
住所（または氏名）の変更登記を申請して、
登記されている名義人と登記申請する人を一致させる必要があります。
例外として、
相続の場合は、住所変更を省略できます。
※所有者に相続が発生した場合に、
登記されている所有者の住所と、死亡時の住所が一致しなくても、
除票や附票で住所の変遷を証明できれば、住所変更登記は不要です。
※「遺贈」の場合は、
住所変更登記の省略はできません。ご注意ください。
さて、本題。
『相続なのに「共有者全員持分全部移転」？』の話です。
Ｂの単独所有の不動産があるのですが、
この度、Ｂに相続が発生して、子Ｃがこれを相続することになりました。
Ｂの相続が開始した時の登記記録は次の通りです。（※フィクションです）
甲区１番 所有権移転 （平成７年７月７日売買）
大田区蒲焼１－２－３ 持分２分の１ Ａ
大田区蒲焼１－２－３ 持分２分の１ Ｂ
甲区２番 Ａ持分全部移転 （平成２２年２月２２日相続）
大田区蒲鉾４－５－６ 持分２分の１ Ｂ
※ＡＢが不動産を購入した後、Ａが亡くなり、
Ａの持分をＢが相続した結果、
最終的にはＢの単独所有となりました。
※平成２０年頃、Ｂは蒲焼から蒲鉾に引越ししたのですが、
甲区２番の相続登記を申請する際に、
甲区１番の住所は変更していませんでした。
（住所変更しなくても、相続登記は申請できてしまいます）
そこで、この度、Ｂが亡くなってＣが相続したので、
実体上は、ＢからＣへの「所有権移転」となるのですが、
このケースの場合、
登記記録上は、「所有権移転」ではなく、
「共有者全員持分全部移転」と表記されます。
その理由は、法務局の登記システム上、
甲区１番のＢと、甲区２番のＢは、別人として認識されてしまい、
同一人物としての処理ができないから、ということらしいのですが、
相続なのに共有者全員持分全部移転というのは、
司法書士的には、とても奇妙に感じてしまいます。
※蒲焼のＢと、蒲鉾のＢが、別人とされているにもかかわらず、
同一の相続でＣに権利が移転した旨の登記がされているなんて、
何とも不思議な状況ですよね。
（↑売買だと、まぁ納得できなくもないのですが）
ちなみに、この様なケースで、
「所有権移転」としてオンライン申請すると、
法務局側ではエラーで処理を進められないそうです。
今回はオンライン申請していたので、
申請人（司法書士）側で、申請データを、
「共有者全員持分全部移転」に修正する必要がありました。
ちなみに添付書類については、修正不要でした。
（↑実体上は間違っていないですから）
※尚、書面申請の場合は、
結果としては、「共有者全員持分全部移転」と表記されますが、
提出した申請書や添付書類については、
「所有権移転」の表現のままでも修正は不要だったと思います。
（↑実体上は間違っていないですから（２回目））
実は、こういった奇妙な状況を避けるためには、
甲区２番の「Ａ持分全部移転」登記を申請する際に、
その前件として「Ｂの住所変更登記」を申請すれば良かったのですが、
この辺りの細かい部分は、
司法書士でないとスルーしてしまう事が多いのだろうと思います。
以上、簡単そうに見えて、実は落とし穴がありますよ、という事例でした。
⇒登記手続に関しては、是非、司法書士にご相談ください！
最後に余談。
登記システム上、名義人については、
「住所の末尾５文字」と「氏名」を、キーとして識別しているそうです。
ということは、もし、例えば、
「蒲焼１－２－３ Ｂ」と「蒲鉾１－２－３ Ｂ」だったとしたら、
システム上は、同一人物として処理することができてしまう、ということですね。
（↑当然、登記官のチェックで弾かれますけど）
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司法書士 黒川雅揮
司法書士黒川雅揮事務所ＨＰ⇒http://k-legal.jp/
