「月報 司法書士 7月号」が手元に届いたので、
懲戒処分事例を確認したところ、
とある司法書士が、
相続業務における非弁行為により、
業務停止処分を受けたそうです。
弁護士法72条により、
弁護士でない者が、弁護士業務を行うことは禁止されています。
これに違反する行為を、非弁行為といいます。
「代理人として、相手方と交渉する行為」は、
原則として、弁護士にしかできません。
尚、一定の資格を有する司法書士については、
争いの額が140万円以内の民事事件に限り、
代理人として相手方と交渉することができますが、
相続(遺産分割)等の家事事件については、
争いの額にかかわらず、
司法書士には代理交渉が認められていません。
司法書士が、相続関係の業務をおこなうときには、
非弁行為に該当する行為をしない様に気を付けています。
【例①】
相続人全員が集まって遺産分割を行うときに、
アドバイザーとして司法書士が同席する場合。
一部の相続人に有利なアドバイスをすることはできません。
その場で司法書士ができることは、
・相続の手続について”説明”すること、
・相続人からの質問に対して”回答”すること、
・話し合いの結果を文書(遺産分割協議書)にまとめること、
・遺産分割協議に基づく相続手続の依頼を受諾すること
といった内容となります。
【例②】
遺産分割がまとまっていない状態で、相続手続の相談を受けた場合。
司法書士から、一部の相続人に対して、
「”遺産分割に協力してください”とお願いする」ことは、
個人的にはアウトだと思います。
仮に、書面はなくても(口頭だけでも)、
すでに遺産分割の話し合いはまとまっているのであれば、
相続手続に必要な書類をととのえる目的で、
司法書士から、一部の相続人に対して、
「”遺産分割協議書への署名捺印に協力してください”とお願いする」ことは、
OKだと思います。
冒頭の懲戒事例のケースでは、
おそらく親切心からやってしまったと思いたいところですが、
(事例の詳細は知りませんので、ホントのところは分かりません。)
国家資格者として業務を行う以上、
その資格に許された職域を守ることは当然です。
”依頼者のため”といって
法律に違反してまで依頼者の要望に応えたとしても、
結局は”依頼者のため”になりませんので。
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司法書士 黒川雅揮
司法書士黒川雅揮事務所HP⇒http://k-legal.jp/