お店とお客の関係も、幸せな暮らしの一つだ。

ある日私は、そう思った。


近所の商店街に
ご夫婦で営んでいらっしゃる仏壇屋さんがある。

そこは、ヤマト宅配便の窓口を兼ねていて、

いつも荷物を送るときは、そこでお願いするのだ。

 

広島に帰るときの、荷物の宅配。
仕事での荷物送り。

いつもこの仏壇店のおじさんが、
丁寧に、丁寧に、受付をしてくれる。

数珠や線香やろうそくが並べられている、レジ台で
送り状を書く。

おじさんは何度も何度も

繰り返し、声に出して確認し、

「送っておくね!」

と言ってくれる。

そして、このおじさんも奥さんも
気さくに声をかけてくれるのだ。

 

「元気?  しほりさん、この前、テレビ見たよ」

 

「あ、しほりさんがヒールを履いている。
あれは、撮影か、お見合いか、 どっちかだよ」


「最近、会わなかったね。

  広島に帰ってた?」

 

 


ある日のことだった。


広島の叔父に、
誕生日プレゼントを宅配便で送ろうと思い、
いつものように
仏具に囲まれている
おじさんのところにやってきた。


誕生日プレゼントは、お財布。

ブティックの素敵な黒い袋に、
お洒落なリボンがかけられていた。

 

ラッピングが

超 素敵!!

 


このオシャレなラッピングを
さらに
宅配用の袋に入れて送りたかった。

 

私 「この袋を宅配用の袋がありますよね?
   それに入れて送りたいですが、ありますか?」

 

 

おじさん 「うん! あるけどね。
      料金かからないように、これを使いなさい」

 

と、少し使い古したヤマトの袋を差し出してくださった。


ん・・・・・


いつもなら 

 

喜んで使わせてもらうところだ。

 

しかし・・・

 

 

今日の荷物は、オシャレなプレゼント。

そうなのだ。  


新しい袋の方がありがたい。

 

私 「あのう・・・・

   今日はね、・・・・

   新しい袋にしたいんですよ~

   プレゼントだから」


おじさん

 

「あ!   新しいのね??

 新品の袋ね?

 

 よ~し!   

         

それじゃあね。

これ、使いなさい!

これ、うちの袋。

 

新品だよ!」

 


と言って差し出してくれた。


見ると、

仏壇店で使う、

仏具の包み。

(イラストはイメージです)


お釈迦さまが手を合わせていらっしゃるような。

 


いや、

しかし、


親切なおじさんが私の費用のことを考えてくれているのに
断るのは

悪いなあ。

 

とっさに私は、

 

「 う、うん・・・   助かります・・・」

 

 

 

 

かくして、

 

仏壇イメージの
おごそかな袋に入れられたこの贈り物が
誕生日プレゼントとなった。


もちろん受け取った叔父は喜んでくれたが
不思議なものに入っているとは思ったらしい。

 

いや、

そんなことよりも


商店街の人情味。

そして、

このおじさんならではの、

家族のような思いやりを、

 

忘れない。

 


 

 

2020年 1月  

松堂  児玉憲司さんは天国に旅立たれました。

ご冥福を心からお祈りいたします。

心安らぐ毎日の元気な笑顔をありがとうございました。