「花冷え」ほど、イヤなものはない。
ある日、私はそう思った。
 
満開の桜。
花冷えの日となると
震えながら、冷たいおむすびを食べる。
厚着をすればいいのだが
春めいた薄手の衣類を着ているから寒い。
 
だって、冬物は納めたやんか!
 
桜は、もはやどうでもよい。
寒い。

それは・・・・花冷えの日だった。
 
 
 
フジテレビのポンキッキーズの収録日のこと。
 
料理の収録の日となると
家のキッチンから持ち出すものが、夜逃げか?
というくらい大量にある。
コンテナに5つ。
いつも女性スタッフがワゴンで迎えに来てくれるのだ。
本当に助かる。
お台場まで遠いもんな。
ありがたい、ありがたい!
 
天気予報では
今日も寒いそうだが、
まあ
ワゴン車で行きかえり、薄着でも問題ない。
ほぼ部屋着のような
適当なスタイルで、うちを出る。
 
フジテレビ。
かわいい子供たちとガチャピン、ムック
かわいい料理に
かわいい先生・・・爆  笑 違うか!
 
そして、その後料理だけの撮影。
 
収録は13時から22時近くまでかかり、
疲れもピークで終了。
「お疲れ様~~」
大丈夫、どんなに疲れても
ワゴン車で連れて帰ってもらえる。
眠ってしまおう・・・・・と。
 
 
ところがだ・・・・・・!
 
 
ワゴンのスタッフは収録の途中、
彼女の制作会社に緊急で呼び出され、
戻ってくると言ったはずが・・・・
 
「ごめんねぇ。  実は、戻れなくなったの。 
荷物はワゴン車に置いてていいから、
 
電車で帰ってくれる????? 」
 
私  「う!・・・・・    うん、わかった」
 
 
 
ひゃー!!!

外は花冷え
とても寒い北風の夜。
 
しまった!! 
 
何ということだ。
 
 
車で行きかえりできると思っていまして・・・
この薄着で果たして、この寒さをしのげるのか??
 
 収録グッズの中の
 
ありとあらゆる布類を探し出し、
下着のように身に着ける。
 
 
ふきん、タオル、エプロン、衣装、ハンカチ・・・
 
いつも収録では大判タオルが役に立つ。
いわゆるバスタオル。
そのバスタオルをスカーフのように巻き付けた。
 
北風ビュービュー
木枯らし〇〇・・・なんだっけ?
 
それどころじゃない、
こんないでたちで、無事に家まで帰ることができるのか?
駅に向かう。
なんと駅までが遠いことか。
さすがお台場
さすが東京。
ありえない広さ。
ありえない距離。
 
やっと電車に飛び乗る。

東京というのは不思議なところで
あまりにも人が多いので、その人の姿を
電車の中でマジマジと見ない気がする。
だよね??
ちがう??
 
いや、恥ずかしさより、防寒だ。
誰も見てない、気にしてない・・・
 

早くうちの駅にたどり着いてくれ!!
 
なんとか駅に着いて
ホームにあふれ出た。
 
その時だった。
 
「やあ! 元気?」
 
こんなときに限って・・・・
 
素敵だなあと、
思っていた男性に呼び止められた。
 
その男性  「仕事の帰り??
 
ん??  上着は、バスタオル??」
 
 
 私 「いえ・・あの
  いろいろありまして・・・・

 その男性  「  離れて歩こ!   」
 
 
花冷えの薄着には,気を付けよう。
ファッションより、保温。
いや、
寒の戻りは、ご勘弁。
 
 
料理名  「春のおやま寿司」