の続きです。
謝罪はすぐするに限る。
そう思っていた私を伊藤先生は止め、
言いました。
『リナとちゃんと話してから、谷さんの謝罪を受けたいと言っていまして…』
…あ、そっか。
働いてるんだもん、
まだリナちゃんと会えてないよね。
まず帰ってリナちゃんの話を聞いてから、
というのは、確かにそうだ。
『そうですよね、分かりました。
夜にでもお電話してみます』
と私が言うと、伊藤先生はまた
『いや、夜でもまだリナに会えないと思います、リナのお母さん』
と言いました。
『え…じゃいつ電話すれば…?』
『1週間後…くらいですかね?
』
………え![]()
一緒に暮らしてて、
1週間も娘と顔を合わせないって…
そんなことあるの?![]()
ふと、何でも知りたがりの冬子さんが
以前リナちゃんに根掘り葉掘り聞いた事を
ぺらぺら喋っていたのを思い出しました。
『リナちゃんのお母さん、フルで働いてて夜も働いてるんだって!
たぶんシングルなんだと思うよ!』
その時は興味が無くて聞き流してたけど、
今までの先生の話からするに、
たぶん本当にシングルなんでしょうね。
ダブルワークをしてるなんて、
大変なんだろうな…。
よく考えてみれば、
すぐに謝罪したいというのは
私の一方的な思いにすぎません。
1週間というのは正直
私には理解できないけれど、
先方がそういうのなら従うしかありません。
机に突っ伏すコウを起こして連れ、
私はシュウが待つ別室へ行きました。
シュウは、その日の調理実習で
余ったという紅いもタルトをぺろっと食べ、
先生と歴史の本を読んでおしゃべりしていました。
『すごいねシュウくん!日本史けっこう詳しいんだね!』
『オレは真田幸村が好きなんだ
』
シュウを見て、
再びコウに怒りが湧いてきました。
これからもこうやって、
シュウがコウの犠牲を強いられることも
あるんだろうか?
どうしてコウはそんなことも
分からないんだろう。
どれだけ迷惑をかけたら
理解できるんだろう。
気づけば私は先生の目もはばからずに
コウに暴言を吐いていました。
『コウのバカ!大バカ!ドアホ!!
あんた何とも思わないの?!シュウにも言う事無いの?!
シュウからも言ってやって!』
するとシュウは
そっと私の手を握って言いました。
『ママ…バカって言っちゃいけないんだよ』
何とも言えず情けなくなって、
涙が溢れてきて、
私はしゃがみ込みました。
私の背中の左をさすってくれる手が
あたたかくて、
たぶんシュウを見てくれていた
女性の先生の手だなと思いました。
やがて背中の右にも
小さくさする手を感じました。
シュウだなと思いました。
きっとそんな私の背中を、
コウは黙って見下ろしている。
一体どんな気持ちでコウは
私を見下ろしてるんだろう。
悲しくて悔しくて情けなくて。
涙が止まりませんでした。
…続きます。
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