今年の4月頃のお話です。
の続きです。
なんとなく空気の悪さを感じながら
始まった授業参観。
一人ずつ自己紹介が始まりました。
3年生から順番に始まり、
いよいよコウの番。
『谷コウです。
出身小学校は〇〇小です。
好きな音楽は星野源です
』
えー、コウくん大人の趣味ですね！
…と周りから言われましたが、
なんてことない、
ドラえもんが好きなだけ
しかも。
『将来の夢は、競馬の騎手です
』
どっと笑いが起きました
コウの動物嫌いは有名です。
チワワに吠えられ猛ダッシュで逃げる奴が
騎手なんてなれるか
コウを以前から知ってる子も、
まだあまり仲良くなさそうな1年生の子も
コウの発表を機に笑っていました。
少しピリピリしていた空気が和み、
発表の内容はどうあれ
よくやったぞ、コウ
と安心して他の子を改めて見回すと、
私はあることに気づきました。
ゆうくんの他に、
同じ小学校から来た子は4名。
それがどの子なのか分からない…
卒業した小学校にコウが在籍したのは、
小5からの2年間のみ。
ママ友付き合いに積極的じゃなかった私は
そりゃ他の子の顔を知らなくても
当たり前だよな…
子供も保護者も顔と名前と組み合わせが
まったく一致しないまま、
自己紹介は進んでいきます。
1年生のターンになり聞いていると、
みんな1年生は受け答えがしっかりしてて、
自己紹介シートも読めるきれいな字で
書いていました。
“今年の1年生は、軽度の子が多いんだなぁ”
軽度といえど、通常級じゃやっていけない
“何か”がみんなあるんだろうな。
私の中でシュウと重なり、
複雑な気持ちで見ていると、
ある男の子の順番になりました。
ちょっと体格が良くて、
体重はコウよりあるだろうなという
見た目の彼は、自己紹介で
『出身小学校は〇〇小です』
と、コウと同じ小学校の名前を
口にしました。
あー…名前は名簿とかで見たことあるけど、
顔を見るのは初めてだな…。
こんな子だったのか…。
ぶっきらぼうな感じだけど
コウみたいに落ち着きがないわけじゃないし、
発表もしっかりしてる…。
この子は何の特性があるんだろう？
…と、プロジェクターに映し出された
自己紹介シートを見て、
私はびっくりしました。
字がとても小さくて、
決してきれいでは無い字で。
コウも字はヘタですが、
正直あんなにしっかり喋れる子が
本当にこんな字を書くのか…？
と思いました。
すると隣で見ていた冬子さんが、
私が誰が誰だか分かってないのを察したのか
耳打ちで教えてくれました。
『ヒロくんは、学習障害なんですよ』
え？あ…あぁ…
学習障害って聞いたことはあるけど、
私の周囲で実際に目にしたのは
初めてでした。
たぶん自閉症や知的障害に比べると
少数ですしね…。
きっと自閉症とは全く別の苦しみや
理解されないツラさが、
学習障害というのは大きいんだろうな。
私もさっき
“この子がこんな字を？！”
って思ってしまったし。
何も分からない人が見たら
ふざけて書いてるのか？！
とも思われかねないだろうな…。
冬子さんがこっそり指さして
教えてくれた、
ヒロくんのお母さんを遠目で見て、
何ともいえない気持ちになりました。
…続きます。
