の続きです。
夏休みが明けてすぐの9月のある日。
夕食の支度をしていると、
電話がかかってきました。
画面には、川崎先生の名前が。
基本的に連絡があるときは
伊藤先生から電話がくるので、
何だろう?と思いました。
伊藤先生が出張でいない…とかかな?
『もしもし、谷です』
『忙しい時間にごめんね。ちょっとお母さんお話いい?』
『はい…何でしょう?』
『コウはもう帰ってきてる?落ち込んでない?』
『えっ?』
放デイから帰ってきていたコウは、
自分の部屋でゲームをしていました。
特に変わったところは
無かったように思います。
それを伝えると川崎先生は苦笑しました。
『落ち込んでないのは良かったけど、気にしてないのもなぁ…』
『実はお母さんに謝らなければいけないことがあって』
『えっ?!何ですか?!!』
『今日コウを、思いっきり叱ってしまいました』
…はぁ…
『ちょっと怒りすぎたなってくらい、叱ってしまいました』
…はぁ……
『でも、これくらい叱らないとコウは分からないと思ったんです』
…はぁ………
あの…
『コウは何をやらかしたんでしょうか…?』
まさか女の子に…?
恐れていたことが……??
『2‐Aにゆきって女の子がいるんだけどね』
ゆきちゃんのことは知っていました。
コウより1つ上の女の子。
小学校は別だったんですが、
同じ放デイを使っていたので、
入学前の見学の時にコウも
『あ、ゆきちゃん』
と見つけていました。
賢そうで、物静かなかわいい子です。
まさかゆきちゃんに…?
『ゆきはテニス部なんだよ。
だから帰りの会をやる前に更衣スペースで着替えてたんだけど…』
更衣スペースは教室の一角に
保健室のカーテンのようなものを
L字に付けたもの。
“更衣室”ではありません。
まさかコウ…
カーテン開けたのか?!
『あ、お母さん違う違う。そこまではしてない』
『ゆきが着替えてる間に、靴のにおいを嗅いだの』
………え?
えっと………。
バカヤロー
あいつまじで何してんの?!
着替え中に靴のにおいを嗅いだ?!
このど変態が!
本人が更衣スペースにいる間に、
靴を手に取り、においを嗅いだコウ。
それを見ていた他の子が
『あーーー!!』
と先生を呼び、発覚したとの事です。
予想もしなかったコウが起こした事件に、
私は怒りと呆れでいっぱいになりました。
…続きます。