の続きです。
夏休みに入って早々に行われた、
中学校生活初の三者面談。
コウは相変わらず、
私にひっつきました。
この時も私はやっぱり
気持ち悪いという思いが
消えませんでした。
家ではひっついてこないんです。
外出先でも全然。
コウがひっついてくるのは、
学校もしくは放デイのみ。
デイのスタッフさんに送られて
帰ってきたときも、
家の前で私にひっつきます。
なんでなのよ、もう…
先生の前で気持ち悪いとは言えず、
『恥ずかしいので直していきたい』
とはお話ししました。
そして先生からは、学校での様子が
語られました。
『コウくんはムードメーカーです
何か面白い事を言って、みんなを笑わせようとしてくれます』
へぇー…コウにそんな一面が
てっきり、
独り言満載で自分の世界に浸ってるのかと
思ってました…
『独り言は確かに多いですが、他の子の勉強を邪魔するほどでもないですし。
“コウ、やめなさい”って言うとちゃんと戻ってきますから』
よく自閉症の子は、
環境が変わることが苦手
と言います。
コウもその部類でした。
ですが今回に関しては、
中学校という新しい環境が
コウは大好きなようです。
私から見ても毎日楽しく通ってる
というのが分かりました。
…ただ。
『学校が楽しいと思ってくれるのは良いんですが、メリハリがどうも…』
あぁー…
授業中と休み時間の区別がつかない、
ってことですかね?
『もちろんチャイムが鳴ったら席に着くし、次の授業の準備も言わなくてもやるようになりましたが、授業中もふざけすぎるという部分があります』
想像が容易につく…
20分ほどすると、
コウは大人の話に退屈したのか
教室内を立ち歩くようになりました。
『授業中も…こんな感じですか?席を立ったり…』
『いえ、それは無いですよな?コウ………あ』
ん?
私と向かい合っている伊藤先生の
視線の先は、
私の背中のさらに後ろにありました。
思わず私が振り向くと、
コウはどこから持ってきたのか…
手にナンヨウハギのぬいぐるみを
持っていました。
『ちょっとコウ、それどこから持ってきたの?!』
私の質問にはコウは答えず、
伊藤先生に向かって言いました。
『伊藤先生、これちょうだい』
はぁ?!
ばかやろ、早く元の場所に戻しなさい…
と言おうとしたら伊藤先生まで。
『分かった分かった。だから教室からは出るなよ?』
分かった分かった?!
『いや、伊藤先生…あの…』
『いいんですよ、元々面談が終わったらコウにあげようと思ってたんで』
はい?!
隣のもう一人の担任の先生まで
『うんうん』
と笑顔で頷くだけ。
教室の中で慌ててるのは私だけ…
という構図になりました。
…続きます。
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