囲碁本因坊 むべ | 碁会所探偵シホ&クニ

碁会所探偵シホ&クニ

初段を目指すシホ&クニです。
碁会所で打つのが大好きな私たちが,
お世話になっている碁会所、
初めて行ってみた碁会所をご紹介します。



朝の珈琲を楽しんでいると、電話が鳴った。


「はい、シホクニ探偵事務所」

「探偵さん?」


若い女の声だ。


「ええ」

「よかった。謎の碁会所を見つけたんです。

 調査してもらえませんか?」


珈琲の香りが作用したのだろうか。

私は直感で、この依頼を引き受けようと決めた。

決して女の声に惹かれたわけではない。


ひと通り話を聞いて電話を切ると、

朝から本を読みふけっているシホに声をかけた。


「シホ、仕事よ」


切りのいいところまで読んでから、

シホが顔をあげる。


「OK、クニ」


引き受けた理由をいちいち聞くほど、野暮でないのがありがたい。


すぐに調査員に連絡を取り、

私は電話で、謎の碁会所へのアプローチを試みた。






なんてね、

長い妄想、失礼いたしました。



実は、今回紹介する「囲碁本因坊 むべ」。


教えてくれたのは、

碁友で、現在子育て真っ最中のAちゃんです。



シホがgoxi(囲碁のSNS)に、

碁会所探偵の日記をアップしたところ、

Aちゃんが、


「家の近くに謎の碁会所を見つけました」


と、タレコミ、ではなくコメントを寄せてくれたのです。



今回の担当はクニですが、

この碁会所に二人とも興味深々。

探偵するならここしかない! と、

迷わず調査することに決めたのでした。




謎ポイントは3つ。


・「むべ」という店名が面白い。その由来は?


・ネット上にアップされていた「むべ」のチラシ(?)によれば、

 「飲食ご用意できます」「囲碁室内は飲食不可」

 とある。どういうこと?


・そのチラシが掲載されているのは、楽器店のブログの中。なぜ?



深まる謎を抱えたまま、

6月のとある土曜日、探偵一行は「むべ」へと向かったのでした。


今回のメンバーは、

調査員のAさん、Hさん、Kさんと、シホクニ。

Aちゃんとは現地で合流する予定です。



西武新宿線「東久留米」駅から、

清瀬方面に向かって線路わきを進み、

さらに閑静な住宅街を歩くこと13分。


駅を降りたときは「東京都」だった住所が、

「埼玉県新座市」になっていました。




碁会所探偵シホ&クニ


※途中こんな風景も。いいところです


それにしても、

碁会所といえば駅前の雑居ビルの2階が定番。

駅からこんなに離れた、

しかも「ザ・住宅街」のなかに、

本当に碁会所があるのでしょうか?


お客さんは集まってくるのでしょうか…。


あれこれ考えながら歩いて行くと、

大通りにぶつかったところに、


ありました。囲碁の看板。




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「むべ」は、オーナーの自宅である一戸建ての1階部分に、

お食事処と並んで営業している碁会所だったのです。





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手前の「むべ」がお食事処。

奥の「むべ」が碁会所で、入り口もわかれています。

(中ではつながっている)




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※こちらが碁会所の入り口



到着するとすぐに、

オーナーの斎藤郁子さんが、

赤ちゃんを抱いて出迎えてくれました。




すでに到着していたAちゃんの息子Kくんです。

「お待ちしていました」

にこやかに迎えてくださった斎藤さんとともに

さっそく店内へ。


すると

「ほお~」

一同からため息が漏れました。


店内の雰囲気が、とてもすてきだったからです。


ひとことでいえば、

個人のお宅に遊びに来たような感覚。





決して広い空間ではありませんが、

受付を設けていないこと。

靴を脱いでスリッパに履き替えるスタイルなどが、

余計にそう感じさせるのかもしれません。




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※奥には庭もあります




壁も床もすべて木造り。

ひじ掛けのついた白木の椅子、ダークブラウンのテーブルなど、

ひとつひとつの家具もセンスにあふれています。


家具が大好きなクニが、

「この椅子、ほしい!」

と思わずさすると、





「実はこだわったんですよ」

と、斎藤さん。




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椅子は気に行ったものを求めて熊谷まで買い付けに。

テーブルは京都のもので、

碁盤にピッタリのサイズを探しに探したといいます。




置かれた碁盤は現在9面。

う~ん、碁盤も厚みがあります。



斎藤さんが碁会所を始めたのはおととしの9月。


それまでこの場所は、

ピアノ教室として貸し出していました。

(その縁で、「むべ」のチラシが楽器店のブログに載っていたのですね)




きっかけは、何気ない会話でした。

囲碁の上手なご近所さんに、

「駅前じゃなくて、もっと近くに碁会所があるといいよね」

と言われて、

「それなら、やってみようかな」

と、決めてしまったのです。


簡単におっしゃいますが、

実は斎藤さん、囲碁は全くの初心者。


不安はなかったのですか? と尋ねると、

「せっかく場所はあるのだし、何とかなるだろうと思ったんですよ」


お客さんに背中を押され、

「席亭」を置かないまま、店を始めたのでした。


「ところが、何とかならなかったのね」

と笑う斎藤さん。


店の切り盛りはできても、

対局に関してはまったくわかりません。

初めてのお客さんがみえても、

棋力がわからない、組み合わせができない。

これには困りました。



でも、そこは斎藤さんのお人柄。

すでに常連になっていた3人の高段者の方が、

新しいお客さんと打って、

棋力を判断してくれるようになったのです。



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※この日も打っていた強い3人の方たち





おかげで対局の組み合わせもスムーズにできるようになりました。




そんな斎藤さんは元公務員。

50代はじめに仕事を早期退職し、

同時に自宅の1階でお食事処を始めました。


これまた飲食業の経験はありませんでしたが、

料理をすることも、

人と話すことも大好きだったので、

とくに不安を感じることもなく店を始めたといいます。


それが12年前のこと。


今では、

私生活のパートナーである榎本博さんとともに

両方の店を切り盛りしています。



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※斎藤郁子さんと榎本博さん。とてもお綺麗です。



6時に碁会所が閉まると同時にお食事処がオープンするため、

昼間たっぷりと碁を打ったあと、

となりで「焼きそばとビール」なんてことができるのです。




碁会所探偵シホ&クニ

※オープン前のお食事処



「むべ」のご近所の方が

本当にうらやましいですね。



そして、とにかくアクティブな斎藤さん。

碁会所を始める前には、

還暦の前祝いにと、

四国八十八か所のお遍路さんにも挑戦し、

42日間たったひとりで巡りました。


気力も行動力も、体力もすごい!



「次は何をしようと、いつも考えていますね」

さらりとおっしゃいます。



では囲碁は?

とうかがうと、


「碁会所でみなさんが打っているのを見ているうちに、

ルールを少しずつ覚えてきました。

強い方の碁に接しているおかげで、

カタチがいいとか、きれいとか感覚でわかりますね」


棋譜並べと同じ効果かもしれませんね。




最後に、

残った謎である「むべ」について聞いてみました。


「花の『むべ』から取りました。私の名前が『郁子』ですから」



そうなんです。

「郁子」と書いて「むべ」と読む花があるんですね。



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これが「むべ」の花。


「むべ」の実はアケビによく似ていますが、

アケビが熟すとパックリと開くのに対して

むべは開きません。




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「決して口を割らないのがむべなんですよ」

と斎藤さんはにっこり。



また、むべは常緑樹で、一年中緑の葉をつけているところも

お気に入りなのだそうです。




店の看板の「むべ」という文字は

書道家の友人が店のために書いてくれました。



何十枚と書いてくれて、

気に入った一枚を選んだところ、

書いた友人に、「私もそれよ」といわれてたのだとか。


いい文字です。



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※食事処。奥に碁会所があります


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※ こちらもお友達の作品「私の耳は貝の殻…」





さて、この日7カ月になる息子のKくんを連れて

駆けつけてくれたAちゃん。

すっかり優しいママの顔になっていました。




Kくんのかわいさに一同はメロメロ。

とくにAさんは

「グランパと呼ばせる!」と宣言するほど、

Kくんにやられていました。



気持ちが伝わったのか

Aさんに抱っこされてごきげんのKくん。



その後も

かわりばんこに抱っこさせてもらっちゃって、

ごめんね。



Aちゃんとは、

落ち着いたらまたみんなで打とうね、

と約束をして別れました。



それにしても

家から徒歩数分のところに

こんなすてきな碁会所があるなんて

うらやましいな。



これはきっと何かの運命だ!


紹介してくれてどうもありがとう。





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                                      by クニ



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囲碁本因坊むべ



住所 新座市新堀2‐5‐30

電話 042-472-9397


営業時間  12時~6時

定休日    月曜、火曜

料金     700円

        12枚綴りチケット7000円