「医療の民主化」予防・健康重視の医療への転換! | 『現場に飛び込み、声なき声を聴く!』 しげとく和彦のブログ

『現場に飛び込み、声なき声を聴く!』 しげとく和彦のブログ

S45年生れ。衆議院議員候補(愛知12区岡崎・西尾)。元総務省職員。H16年新潟県中越地震で崖崩れ現場からの2歳男児救出に従事。22年愛知県知事選(次点)。H24年に初当選。H26年、H29年無所属で3選。

11/30(土)西尾市でのパーティーに、同僚の中島克仁・衆院議員(山梨1区)をお招きし、トークセッションをやりました。
『医療の民主化』、すなわち、国民本位(予防・健康重視)の医療への転換がテーマでした。
少し長くなりますが、趣旨を説明します。
  
(1)治療から予防へ
  
医師でもある中島さんは、ご自身の在宅医療などの経験から、「病気になってから治療する制度から、日頃から予防・相談・健康管理する制度に転換すべき」と言っておられます。
 
「治療から予防へ」。
よく耳にするようになったフレーズですが、実は医師が予防医療に専念したくても、今の制度では限界があります。
 
(2)現行制度の課題(「予防」は医療の対象外)
  
現行の医療保険制度(国民皆保険とフリーアクセス)では、私たちは病気になれば、どの医療機関へも自由にかかることができます。
他方で、病気になるまでの予防(健康管理)は、基本的に自己管理です。
つまり、「予防」は医療の対象外であり、病名が付いて初めて医療の対象となるのです。
  
過去、日本人の死因を結核など感染症が占めていた頃は、この仕組みがうまく回っていました。なぜなら感染症は、体の中に原因があるのでなく、細菌やウイルスが体外から入ってくることが原因であり、体内の健康を管理する予防医療よりも、現に入ってきた細菌等と闘って病気を治療することにこそ医療の使命があったからです。
高度経済成長期の豊富な若年層の勤労世代(健康体が多い)が、たまたま病気になったら、病院に行って治してもらう。その経済リスクを分かち合うためにスタートしたのが、国民皆保険でした。
 
しかし、制度発足から50年以上経ち、結核がほぼ根絶されるとともに、高齢化が進み、死因の上位はいまや生活習慣病です。生活習慣病は、現在、診療費の約3分の1(高齢化由来の疾患を加えると半分以上)を占めます。生活習慣病の原因は、体の中の複数要因が関係する老化や生活習慣であり、これを防ぐ最善の方法は、食生活や運動、ストレス調整による「予防」です。
感染症と違って、病気になってからいくら薬を飲んだり手術をしても、完治するとは限りません。
  
つまり、今必要なことは、生活習慣病を念頭に置いた新しい医療制度をつくることなのです。
  
(3)予防中心の「かかりつけ医」の登録制度(ベース医療の構築)
  
こうした背景から、今回のトークセッションで論じたのは、すべての国民が、予防医療・相談・健康管理を総合的に担う「かかりつけ医」に登録する制度です。
  
「かかりつけ医」は、これまでも医師会などがその必要性を謳ってきましたが、法律上の制度はなく、位置づけがあいまいでした。
近くにいて、いつでも、どんな病気でも診てくれる。必要な時にふさわしい医療機関を紹介する、健康コーディネーター的存在とも言えるでしょう(東京都医師会HPより)。
また、在宅医療や看取りを担うことも、かかりつけ医の重要な任務でしょう。日常生活から終末期まで、時に家族ぐるみで、人生をともに歩むパートナーとも言えます。
 
かかりつけ医の登録制度は、国民皆保険・フリーアクセスを前提に、一定の移行期間をかけて構築することを想定しています。したがって、かかりつけ医を登録しても、患者の判断で別の病院・医師にかかることも可とします。また、かかりつけ医を担う人材については、「総合診療医」の養成が始まるなど、徐々に環境が整いつつあります。
 
医師だけでなく、予防・健康づくりを担う幅広い関係者とともに、チームで支援する体制も必要だと考えます。
この人生の基礎を支える、かかりつけ医などの医療体制を『ベース医療』と呼ぶことにします。
  
(4)高度医療と、かかりつけ医(ベース医療)の連携
 
もちろん、ベース医療では診きれない重篤化した患者さんは、高度医療(大病院の専門診療科)でしっかり治療してもらう必要があります。
大切なのは、高度医療で検査・投薬・手術を受け、退院した後のケアを、かかりつけ医(ベース医療)が適切に引き継ぐことです。
そのため、個人情報保護に配慮しつつ、既往歴も含めた、保健医療情報を電子データ化して共有する必要もあるでしょう。これにより、重複する投薬や検査も大幅に減ると考えられます。
  
こうした仕組みにより、多くの人が健康で長生きできる社会こそ、人生100年時代の人類の夢ではないでしょうか。
  
(5)国民本位の医療改革で、社会保障への不安解消を
  
私が今の医療制度に疑問を持つようになったのは、消費増税をめぐるモヤモヤ感がきっかけです。
  
来年10月の消費税10%による増収はすべて社会保障に充てることになっています。
しかし皆さんは、果たして10%になれば、社会保障が良くなると感じていますか?
そして、税率は10%でとどまると思えますか?どこまで上がると思いますか?
いずれも全く不透明であり、不安が拭えないと思います。
 
増税の条件は、安心な社会保障と、政府への信頼です。
  
しかし、複雑怪奇な軽減税率、昨年の総選挙前に突如決まった幼児教育無償化(高所得者も対象)、さらに5%ポイント還元や地域振興券などの策を弄しても、安心や信頼は生まれない。
消費税を上げても上げても、不安が消えない社会保障では、いったい何のための増税なのか分かりません。不幸な増税になりそうです。
  
そうであれば、先に手を付けるべきは、社会保障制度の改革ではないでしょうか。
一人ひとりの生命と人生を支える医療を、国民本位(予防・健康重視)の制度に転換すべきです。
  
この改革の実現に向け、今後、国会議員だけでなく、地方議員・首長、医療・産業界など、幅広い国民との対話を続け、社会を動かす『政治革新運動』を興さなければならないと考えます。