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横浜市の医療安全対策

横浜市の医療安全対策

横浜市保健所(横浜市医療安全課)と大口病院事件 その5

 

そもそも日本で医療安全と言われる様になった起源はどこからか。厚労省のホームページを検索すると明記してある。日本の医療安全の発端は、平成111月に横浜市立大学医学部で起きた取り違え事件からであると。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/keii/

 

その後、厚労省で医療安全対策が議論され、平成15年医療安全支援センターの設置を開始するよう自治体に発信。横浜市は医療安全相談窓口を設置した。

 

医療安全の発端となった横浜市が、現在までどの様に医療安全に取り組んできたかを検証することは、日本の医療安全の真価を評価することに繋がるはず。

 

少なからず、取り違え事件当時も現在も、横浜市大医学部の予算、人事を掌握しているのは横浜市職員幹部OBであり横浜市職員幹部で、市大医学部の体質は少なからず彼らの体質が反映される。学位審査謝礼金問題の時、内部告発者への不当な扱いを改善しなかったのは彼らだ と聞く。

 

横浜市保健所(医療安全課)の、大口病院からの告発メールに関する対応は、医療安全の真価を評価する以前の問題として社会に大きく問われている。行政組織として、負のインパクトを市民、国民に与えてしまったことを認識しなければならない。

 

9月29日の本会議で林市長は、医療安全課の対応を弁護士らによる第3者検証委員会を設立し検証すると。まさに日本の医療安全史上、非常に注目される検証となる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160930-00000014-mai-soci

http://www.yomiuri.co.jp/national/20160929-OYT1T50167.html

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160930-00012327-kana-l14

 

しかし、この事例だけを特化して取り上げた検証では何の意味もなさない。最も注目しなければならないのは、10月1日の神奈川新聞報道部の記事である。

 

市には病院に関する相談や苦情は年間約5千件あり、今回の様に医療法上問題がある内容は数十件に上るという点である。

 

医療安全課内で、今回の様な告発メールあるいは医療法上問題がある相談を一体今まで、どう具体的に対応してきたかの検証は必須であるはずだ。

 

報道によると、大口病院に関する告発メールに対し、何もしないという対応をする横浜市保健所(医療安全課)の体質は、1日で出来上がるものではないと思うからだ。

 

次に、注意すべきは選定される第3者検証委員会のメンバーであろう。昨今、日本の医療安全は、ある意味、暗礁にのりあげている感がある。

 

医療安全と医療の質を評価する日本医療機能評価機構認定病院であった群馬大学医学部の病院では50の外科手術の全死亡例が不備と指摘された。

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160523-OYTET50019/

 

また、日本医療安全学会の講演で学会の代議員が、医療事故死亡者の遺族を「遺賊」として、表現したことが社会的に大きく問われた。

 

「遺賊が求めているのは金と医師・看護師への処罰であって、原因究明や再発防止は関係ない」などと、遺族を面白おかしく表現した言葉に場が笑いに包まれたという。

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160827-OYTET50000/

 

だから、医療安全の専門家といっても、これからは選定に十分注意が必要であり、誰がメンバーを選定するかも興味深い。

 

検証されるべき横浜市保健所(医療安全課)を組織内に配置する健康福祉局の職員らが選定するわけにはいかないだろう。また、病院経営に関与する医療局が選定しても、公正さは担保できないと思う。特に、弁護士の選定は最も慎重でなければならない。

 

例えば、医療安全課が作成した冊子「横浜市医療相談窓口8年間のあゆみ」の挨拶文は、横浜市健康福祉局長、横浜市保健所長から始まり、医師会、歯科医師会、病院協会、薬剤師会、看護協会と医療関係者の代表者ばかりである

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/soudan-madoguchi/shiryo/ayumihajimeni.pdf

 

最後に東京大学大学院医療安全管理学講座とあるが、この講座の特任教授名は医師と

弁護士の資格をもつ児玉安司氏であり、医療側仲裁人候補者として名を連ねている。

http://square.umin.ac.jp/MSMCM/

http://www.toben.or.jp/bengoshi/kaiketsu/3kai-iryo-adr.html

 

一方、肝炎訴訟で患者側弁護士として著名な鈴木利廣氏は患者側仲裁候補者に名を連ねているので児玉安司氏は、少なくとも患者側の弁護士でないと推察。つまり、あゆみには患者団体代表、患者側弁護士の挨拶文が掲載されていない。

 

また、医療安全課主催の研修での弁護士講師陣の顔ぶれは興味深い。横浜市立の病院側弁護士として活躍されてきた高井佳江子氏の名もある。そして、医療トラブル、医療クレームに関する講演が散見される

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/soudan-madoguchi/kenshukai.html

 

医療安全課は、健康福祉局内組織である。つまり、病院側に軸足を置いてきた健康福祉局による弁護士選定は、公正さを担保できない可能性が極めて高い。

 

平成26920日の日本産婦人科学会理事会議事録に、子宮頸がん征圧をめざす専門家会議メンバー宮城悦子医師の利益相反問題に関し ”兼業は大学の正式業務外あり、大学名で公開する必要がないと明言。大学に掛け合う” という平岩敬一弁護士の言及が記載してある。この様なスタンスの弁護士も、検証委員会メンバーとして適切と思えないがどうであろう。

http://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12022191608.html

 

さて、医療安全課は、元横浜市立大学医学部医療安全管理学教授である橋本廸生医師の影響を少なからず受けてきた。

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/soudan-madoguchi/anzenkanrisiyakaigi2.html

 

橋本医師は、例の群馬大学医学部大学病院を医療安全と医療の質が高いと認定した日本医療機能評価機構の役員でもある。

http://jcqhc.or.jp/about/

 

中田市長時代から、横浜市は第三者委員会を立ち上げる様になった。横浜市医療局の前衛である、衛生局、病院経営局は頻回に立ちあげ、最終的には局が立てた路線に結論づけてきたと聞く。

 

第三者委員会で印象的だったのは、横浜市救急医療センター指定管理者選定委員会で、指定管理者に横浜市病院協会を選定。2年も経たないうちに補助金不正受給が発覚し指定管理は取り消された。

http://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-10700571853.html

http://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12062540758.html

 

その時の委員は、以下の方達であった。

委員長は、矢野 聡 日本大学法学部 医療管理学教授。委員は、井上 光昭 公認会計士、関 一平 聖マリアンナ医科大学医学部 救急医学助教授、橋本 廸生 横浜市立大学医学部 医療安全管理学教授、松岡 美子 よこはま・こどものこころとからだを紡ぐ会代表。

 

さて、今回の第三者検証委員会の結果は、日本の医療安全史上、非常に注目される。そして、連続殺人事件が背景にあるだけに、ことは深刻である。医療安全の専門家の選定も非常に慎重にすべきであろう。

 

永い年月で作られてきた危機感のない体質は、簡単に改善できるものではない。人事的問題もある。

 

今年起きた爆破予告も、議会で指摘されるまで、きちんと対応しなかった横浜市。

 

この重大な事件直後に、林市長の意見と異なり「適切な対応であった」と公言できる 横浜市保健所(医療安全課)。

 

実効性のある構造改革なくして、再発防止は望めないのではと危惧している。