横浜市立脳血管医療センターと横浜市立大学医学部 | 不可能をかのうにする かのう重雄 オフィシャルブログ「一つ、ひとつを重ねて」 Powered by Ameba

横浜市立脳血管医療センターと横浜市立大学医学部

横浜市立脳血管医療センターと横浜市立大学医学部




脳卒中の政策医療として建設された横浜市立脳血管医療センター。まさに先見性のある政策だった。なぜなら、今現在、横浜市では脳卒中患者数は増加し、要介護給付額もうなぎ上りと上昇中である。


この様な状況下でわざわざ、脳卒中医療を縮小化し、センターの名称を変更する必要があるのか?一体、誰がそれを望んできたかという根本的な疑問がある。


横浜市立脳血管医療センターの歴史はまさに、脳卒中を診る病院が多数存在する日本の大都市における脳卒中センター設置の失敗という大きな意味を持つ。欧米で成功した脳卒中センター設置が、なぜ、この横浜市では成功しなかったのかという大きな問題が内在しているのである。


今年1月、有志で行われた消防局の勉強会で、南区、西区、磯子区、中区、港南区は脳卒中死亡の割合が市内の中でも高い地域であり、センターがその現状に即した絶好の立地条件に建設されていたことを改めて認識した。


少子高齢化から税収悪化が今後見込まれる本市においても、根拠に基づいた医療政策を展開することは当然至極のことであるはずだ。また、10年前と今とでは大きく状況が異なっている。センターの脳卒中病床の縮小化は何を意味するのか?


それは、南区、西区、磯子区、中区、港南区の市民にとって、近隣のセンターで受けることが出来ていた脳卒中医療が、さらに受けられない破目に陥るということである。結果として、患者さんは分散して搬送される。横浜市立脳血管医療センターのように、最新の医療機器と広大なリハビリ施設をもった脳卒中を扱う病院はまず存在しない。


事実、現在横浜市の救急隊が脳卒中だと疑った患者さんを最も搬送している病院はリハビリ施設もない病院である。10年前より事態は悪化しているのが現実である。


一方、最新の医療機器と広大なリハビリ施設を持ったからといっても病院の評判はあがらない。最も重要なのは優れた倫理観と技術を兼ね備えた脳卒中医療を行う医療スタッフの存在である。それをできないことが、この横浜市立脳血管医療センターの最も大きな問題なのだ。


我々議員がこの大きな問題を議論するとき、丁寧に歴史的経過を分析する必要がある。決して、行政側によって作られた都合の良い資料だけを参考にして判断することは好ましくはない。昨今、子宮頸がんワクチン副反応問題で十分痛い目にあっているだけに慎重になるべきである。


さて、平成172月に書かれた神奈川新聞の社説は非常に興味深い。全文

を掲載したい。

http://www.kit.hi-ho.ne.jp/msatou/05-02/050216kanagawa-noukekkan.htm


■脳血管センター問題

衛生行政を含む組織的隠ぺい体質が疑われた横浜市立脳血管医療センターの内視鏡手術での医療過誤問題をめぐって、同市は先月、衛生部幹部職員や関与した医療者ら二十五人を処分し、センター幹部級の人事異動を矢継ぎ早に行った。一定の「けじめ」をつけたとの印象を与えたいのだろうが、患者中心の医療へと改善が図られるか、疑問は増すばかりである。 


この医療過誤は、横浜市大医学部出身の脳神経外科医らが引き起こした。隠ぺい体質の背景について、身内(市大出身)同士でのかばい合い構造の影響ではないか、と市会側からも厳しく追及されてきた。


改善には、全国から実績を持つ専門医らを招き、市民が信頼できる体制に立て直すことが不可欠であった。にもかかわらず、今回の異動では重要ポストのセンター長、部長級に就いた両医師がいずれも市大出身者で、全体的に市大色を強めた人事になっている。


 

しかも、脳疾患専門のセンターにあって、総括安全管理者を置かず、その代行職を兼務する新センター長に、腹部を診る消化器外科の医師が就いた。患者や家族に疑義が生じれば、その医療行為に責任ある説明ができる体制といえるのか。市民の望む改善が軽視されたと指摘されても仕方がない。 


センターでは、内視鏡の医療過誤手術直後にも院内手続きを無視した血管内治療の手術が行われ、米国籍の男性患者が死亡する事故が起きている。事故に関与した術者、助手はいずれも市大出身の医師だった。


現在、同事故についての安全管理対策の小委員会が設置されているが、今回の異動で小委メンバーの医師三人はすべて市大出身者で占められた。公正な調査を期待したいが、内視鏡事故の公表に至る一連の経緯から、「また隠そうとしていないか」との疑念を持たれかねない。

 

二十五人の処分、人事異動のベースになった昨年十二月の「脳血管医療センター問題に関する調査委員会」の報告書では、市側の鈍感さが見て取れる。端的な例は、内視鏡手術での検証である。


衛生局長が、同門の市大出身の医師にも正式文書で意見書の提出を求めるよう指示したという事実が明らかになったが、報告書は衛生局長の直接介入の妥当性、同門医師への依頼の適否に言及していない。


「衛生局は市民の信頼を損ねた」との見方は示したが、市民の信用を損ねた、とはどういうことで、これをどう回復していくべきか、市側は突き詰めて考えたのだろうか。

 

厚生労働省は、同センターを脳卒中専門病棟を持つ全国の中核的な病院五施設の一つに選んだ。センターの存在は全否定されるべきではなく、病根を的確に取り除くことこそ求められる。分、人事などの一連の流れからは、市が隠ぺい体質を一掃しようとする「決然たる姿勢」がまるで見えない。


その後、横浜市はどの様な人事を行ってきたか?そして、横浜市立大学医学部がセンターの人事にどの様に深く関わってきたか? 結局、神奈川新聞の社説を引用すれば、横浜市は医療事故に疑義を示した医師たちを排除し、病根を温存させた。


さらに、横浜市は横浜市立大医学部内で、学位審査問題で不正行為をし、かつセンター内で医療事故を起こし、かばいあった医局員たちの上司である元脳神経外科教授をわざわざセンターのトップに据えた。


そして、そのセンター長の下で、さらなる赤字を膨らませ、センターの内部構造まで変えた。市大から脊髄外科を要請し、そして昨今は神経内科部長も横浜市大出身の医師となった。



横浜市は、平成11年度から平成16年度までの脳血管医療センターの横浜市立大医学部出身者以外の医師達で作られた業績の歴史を一切掲載しない。


まるで、320億の脳卒中医療政策のために建設されたセンターが、一大学によって、“私物化された”と言われても仕方のない構造となった。