横浜市医療政策室2013 その2
横浜市医療政策室2013 その2
横浜市の脳卒中対策 その2
5月22日にNHKで放送された「ためしてガッテン」のテーマ。脳梗塞でもう死なないぞ!極めつき!スーパー発見術。
そこで紹介されたのが脳梗塞急性期のtPA治療で、夢のような脳梗塞に対する特効薬と紹介されていた。さらに番組の中では、国立循環器病センターの峰松一夫先生が、tPA治療の説明を行っていた。
峰松一夫先生は、国内で行われたtPA治療の治験において、中心的役割を果たしてきた日本の脳卒中医療の専門家としてトップに位置する方である。
http://www.ncvc.go.jp/topics/002282.html
その峰松一夫先生が、平成16年当時、横浜市立脳血管医療センターに対してどのような見解をもっていたか。国会においても超党派からなる「脳卒中対策推進議員連盟」設立に患者・家族の代表として参加した上野正氏が代表である「脳卒中助かる会」のホームページに明記してある。
http://nosottyu-tasukarukai.com/comment0829-1.html
まず峰松一夫先生によれば、横浜市立脳血管医療センターは「発足の時より、我が国最大、最新鋭の脳卒中専門医療機関として注目された。少なくとも首都圏、関東圏では空前の規模の施設である。
鍵となる人材も神経内科や脳血管内治療の分野では一流と目される人材が多い。t-PA治験等でも登録数は多い。日本脳卒中協会横浜支部が設置され、厚生労働科学研究費補助金による班研究にも参画中である。まさに、首都圏随一の「総合脳卒中センター」であったと考える。」
http://nosottyu-tasukarukai.com/kaitoh_0814-1.html
一方、横浜市衛生局が、当時、脳血管医療センターの機能をどう評価していたかを知るには、平成17年1月20日に行われた福祉衛生環境保全委員会の議事録を読めば明確にわかる。
議事録で確認できる当時の幹部職員らが、退職後、どこに就職したかは非常に興味深いところであるので、現在調査中である。
当時、横浜市衛生局は、脳血管救急機能は市民病院の脳神経外科と神経内科で対応すると言っていた。当時、きちんとしたセンターの内部調査を行い、センターの脳卒中診療部の実力を確認していた手塚議員の質問を転記する。
◆(手塚副委員長) 今まで専門的な病院はそれなりの機能を果たしてきたと思っていて、専門の病院はある面では採算性が合わないという部分があるのですが、しかしながら、その意味というのは私は大変大きいのではないかと思っているんです。 その中で、今後、脳卒中、脳梗塞にかかわる医療が大きく変わってきているということで、市民病院の中に岩崎参与が言われたみたいなものが移った場合に、本当の専門的な機能が生かされてくるのか心配しているのですが、その点についてはいかがでしょうか。
◎(岩崎参与) 私の考えではその方がより現在よりも質が高まるし、しかも安全管理が保持できると考えております。
◆(手塚副委員長) これから厚生労働省の方でも心筋梗塞などの発作に有効なTPAが解禁になるという話を聞いているのですが、そこら辺はどういう方向性になっているのか伺いしたい。
◎(岩崎参与) 現在はTPAによる治療は保険点数で認められておりませんが、恐らく将来的には認められる可能性があると思っております。そうなりますと、ますます一般的な医療として、それがほかの病院でも行われる可能性は大変高いわけでございまして、そういうところと一層の連携を深めながら、連携の中で市民病院がやっていくことになると思います。
議事録において、tPAをTPAと表記しているから呆れてしまう。当時の衛生局行政職員がいかに脳卒中医療を知らない素人集団であったことが今更ながらよくわかる。また、岩崎榮参与も医師だが、医師だからという理由だけで、その発言内容が信頼に値するとはいえない良い事例だったと思う。
当時、岩崎榮衛生局参与が、脳血管医療センターより質の高い脳血管救急の機能を果たすとしていた市民病院の平成22年度下半期と平成23年度のtPA治療の実績を、ここに示したいと思う。
平成22年度下半期は施行数4例。tPA治療は1例のみ成功。死亡1例。平成23年度は施行数6例。1例のみ成功。死亡1例。
治験8例で6例の成功例を示した当時の横浜市立脳血管医療センターの機能にとって代わるとした横浜市の答弁がいかにいい加減なものであったかが、よくわかる。
素人だから許されるという域をこえたでたらめな仕事ぶりだ。彼らは医師ではないから、この横浜市の脳卒中医療政策の失態に対して何ら責任をもたない。そして、8年経過した現在、横浜市保健所、横浜市医療政策室、横浜市病院経営局に今も変わらず当時のメンバーが昇任して配置されている。
一方、当時の国立循環器病センターの峰松一夫先生らがその実力を認めた脳卒中診療部の全員が、横浜市立脳血管医療センターから去った。まさに「覆水盆に返らず」である。
ここに明記しておくが、横浜市立脳血管医療センターにおいて、新しい手術方法でありながら、院内のルールを違反し、倫理委員会も開催せず、内視鏡手術を行い、医療過誤(平成16年9月24日、外部調査委が認定)を引き起こしたのは、横浜市立大学医学部脳外科医局出身の医師らであって、脳卒中診療部のメンバーではない。
元横浜市立大学医学部脳神経外科教授、山本勇夫医師が指導する医局のメンバーであり、その山本勇夫氏は現脳血管医療センター長である。なんと不可解なことか。なんと不可解な人事か。
当時の常任委員会の議事録、外部調査委員会の記録、各社の新聞記事は、横浜市衛生局、横浜市病院経営局の歴史を知り、判断する上での重要な資料である。
最近になっても、その資料等を熟読することなく、日本トップレベルのtPA治療の成績を残した脳卒中診療部のメンバーらを誹謗する医師がいることを、私は非常に残念であると共に、何故そんなことが起こるのか不可解に思う。