横浜市健康福祉局
横浜市健康福祉局の危うい危機管理体制
平成23年度、多くの議会のメンバーが入れ替わった。議員が仕事をする上でとても重要なことは行政の仕事の仕方の歴史を知ることにあると思う。
問題は、何をどう調べれば良いかということだろう。結局、現在の事業がどのような流れの中で組み立てられてきたかを知らないことには、実際、議論はできない。目の前にある事象だけにとらわれてしまう。
横浜市は全くと言っていいくらいに、今までの事業の検証を行わない組織である。何がうまくいって、何がうまくゆかなかったのか?よくわからない。
新聞記事もよほどきちんと整理しておかないと問題点抽出は難しい。報道関係者も人事異動で入れ替わり立ち替わりするので、継続的に問題点を深く掘り下げて記事を書くことはおそらく非常に難しいだろう。
東日本大震災後、東日本は揺れている。12月7日にも大きな地震があった。笑いごとではなく、実際、家を見るまで我が家が壊れたのではないかと心配した。
したがって、今後の横浜市の災害対策は非常に重要である。だからこそ、危機管理に携わってきた職員幹部の今までの仕事の仕方を知ることは重要である。なぜなら、現状の実態のおおかたは、それで検討がつくからである。
11月30日、瀬谷区医師会と懇親の場を持った。横浜市健康福祉局医療政策室は、今回の震災を受けて災害医療体制の見直しを行っているという。
ところが、一方的なお願いだけで、各区医師会との調整がうまくいっていない現実があることを聞いた。医療政策室の現在構成されているメンバーを見れば、おおかた検討がつく事態だったので特に驚くことはなかったが。
ところで、保健所がひとつになる前から、横浜市の健康危機管理を司る行政医師の主要メンバーは変わっていない。
新型インフルエンザの危機は、平成17年から国レベルでは発信されていた。平成17年に横浜市衛生局が新型インフルエンザ対策のマニュアルを作成したものの、平成18年度、健康福祉局は何一つ具体的な対策を推し進めなかった。
新型インフルエンザ対策よりも、保健所をひとつにすることに熱心だったようだ。保健所をひとつにすることで、一番メリットを受けたのは誰かという議論は次に述べたい。
平成19年度にはいり、健康福祉局の健康安全課長と新型インフルエンザ対策の具体策について話をしたが、埒があかなかった。業を煮やして平成19年6月11日の生活安全・危機管理・消防・情報化委員会で以下のように質問した。
◆(加納委員) ―略― この秋にもう1回千葉県が座長で八都県市首脳会議が行われますけれども、そこでおのずと新型インフルエンザについての中間報告が出てくると思います。そして来年は横浜市が座長だと聞いていますが、当然新型インフルエンザについては論議されると思います。
さらに来年はアフリカ諸国の人たちが横浜市に来てアフリカ会議が行われますけれども、そういった中で今安全管理局を中心に各局にまたがってさまざまな対策を組んでいると思いますが、現状十分な対応ができているのかどうか、全庁的なことを含めて副市長のお考えをお伺いします。
◎(金田副市長) 緊急対策チームということで専門家対策チームをつくっておりますけれども、アフリカ会議との関係がどういう関係になっているのか私の方も把握しておりませんが、八都県市で提起されたことについて秋には中間の報告があって、そして来年は横浜市が座長でやっていきますので、その間、いろいろ進めていきたいと思っております。
◆(加納委員) 先ほど紹介したブッシュアメリカ大統領が、災害という形でしっかりと認知しながら体制を組んでいくというような話もありますけれども、危機管理監にお聞きしますが、新型インフルエンザについて、アメリカでは災害と認知しながらいろいろ対応しようとしています。
来年八都県市首脳会議は横浜市が座長、そしてサミット誘致の中、来年アフリカ会議がある中で、安全管理局として災害という認識も含めながらしっかり取り組んでいっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
◎(上原危機管理監) 加納委員御指摘いただいたとおり、単に危機と言いましてもいろいろな危機がございまして、北の方からミサイルが飛んできますし、それから横浜市に関して言えば、港を抱えております関係上、鳥から鳥が、人から人に変異したインフルエンザが新型インフルエンザでございまして、そういう意味では広範な危機の中でも重点をもって取り組むべきが新型インフルエンザ対策だろうと思っております。
既に横浜市の緊急事態対処計画が定まっております。その中で新型インフルエンザ対策も一応枠組みはできておりますが、あとは中身を個々具体的なフェーズに従って訓練が必要だろうと考える次第です。
昨年就任してから秋に一度、市民病院の相楽先生を中心に病院の中で訓練をいたしました。ことしになりましてから横浜の港で模擬訓練をやりました。今年度はさらに新型インフルエンザ対策を危機管理の観点から強力にいろいろな面で取り組んでまいりたいと思っております。
◆(加納委員) 危機管理監がおっしゃるように、一応ペーパーベースではできているという形だと思います。そこから先、所管が健康福祉局だとか、いろいろな形でそれぞれにまたがっていますから、なかなかうまくマッチングできていないと非常に私も感じております。
来年のことを考えますと、安全管理局が中心となって、災害認定というところまで含めて考えて、しっかり取り組んでいただきたい。
結局、平成19年度から配属された行政医師の健康危機管理担当課長が、新型インフルエンザ対策の具体的な骨組みを作成した。横浜市議会の新型インフルエンザ対策の勉強会にも講師として依頼したが、平成19年度に横浜市を去ってしまった。
そして、最近、東京都の感染症課長として活躍している姿を垣間見た。まさに、優秀な人材の流出である。
平成18年度から横浜市の感染症対策の事実上の責任者であった健康安全課長が、現在、医療政策室に配属されている医療政策担当部長(健康安全医務監)である。
そして、平成21年度新型インフルエンザは発生した。弱毒性だからまだ良かったものの、おさまらないうちに、横浜市長は突然辞職した。これも、考えてみれば、これもすごい話である。
横浜市健康福祉局は綱渡りのような、危機管理体制だと私は思っている。