横浜市こども青少年局の児童虐待対策(平成24年度) その4
横浜市こども青少年局の児童虐待対策(平成24年度) その4
専門職と連携ができていないおかしなこども青少年局―根本的な解決にむけた姿勢が疑われる?
虐待死亡事例が起こる度に、横浜市は有識者による外部委員会の検証を行い、報告書を作成している。そして、虐待死亡事例が起こるたびに、繰り返される林文子市長と鯉渕信也局長の締めくくりは、“外部の有識者による委員会を設けて検証していく” という言葉。新聞記事もその言葉でしめくくることが多い。
そして、だいぶ時間も経過し関心がうすれたころに報告書が公表される。よほどの粘り強さがないと、議員にとってもひとつのことの調査を継続し監視続けることは難しい。
平成23年3月3日に行われた予算特別第1委員会(こども青少年局)の菅野義矩議員の質問は非常に印象的だ。
◆(菅野委員) 私も、このDV被害者対策及び児童虐待防止の質問に入る前に、青葉区の案件ですけれども、私も本当にびっくりしています。そしてまた残念です。
これはちょっと警察にもいろいろ聞いたのですけれども、このお母さんは家庭的にちょっといろいろ不安定でこちらへ引っ越してきて、そのとき子供さんは布団をかぶせて寝かせていたと。
子供さんはもともと非常に元気で、食パンなども食べる。パンなども食べてしまう元気なお子さんだったらしいです。これは 結果は乳幼児突然死症候群とお医者さんから言われているのですけれども、これは警察の中でもいろいろ意見はあったみたいです。
そういう中で私はやはり非常に残念なのは、先ほど副市長もおっしゃっていましたけれども、役所の皆さんの仕事というのは本当に命にかかわる大切な仕事なのです。
菅野議員の調査能力には感服する。非常に参考になった。その元気だったこどもが、約一カ月で低栄養になること自体が極めて不自然である。この低栄養という事実を、辻本愛子こども保健医務監(当時青葉区福祉保健センター長)は、個人情報という理由で特別委員会と常任委員会が年度替わりで委員のメンバーが変わるまで口を閉ざしたと、当時調査をしていた多くの議員が激怒し語っていた。
口を閉ざしたのは、辻本こども医務監だけではないのでは。検証報告の言葉を借りれば、市民の生命に関わるものとして高い緊張感を持ち、医学的な知識を必要とする保健師である親子保健担当課長と係長が口を閉ざしたのだから、ひどい話である。その目的も、根本的な解決へ向けた対策のためとはとても思えない姿勢である。
平成23年11月17日、横浜市こども青少年局は医療機関向けのガイドを配布すると記者発表した。
http://www.city.yokohama.jp/ne/news/press/201111/20111117-028-13608.html
その横浜市が配布した「医療機関で子ども虐待を見逃さないためのガイド」を開くと右ページに、 “子ども虐待の重症度判定の目安” の表が載っている。
そして、最重度ネグレクトの項目に脱水症状と低栄養で衰弱と書いてある。つまり、青葉区で亡くなった一歳半のこどもが一カ月という短期間で “低栄養状態になったこと” -それ自体が重要な虐待のサインであったのではないかと今でも疑っている。
そんな重要なサインを言及しなかった辻本愛子青葉区福祉保健センター長が、こども青少年局の医師のトップである こども保健医務監となって今回の港北区の心中事例を常任委員会で答弁しているのだから不安に思うのは私だけではないだろう。
また、青葉区のこどもの死亡に関する事例は、他都市からの養育支援を放置したという課題がありながら、外部委員会による検証をしていない。あれだけ議会で追及され、鯉渕局長が謝罪した事例であるにも関わらず、だ。
さて、今回の常任委員会におけるわが党の中島光徳議員の質問にあるように児童虐待対策には、小児科医のみならず、いろいろな分野の医師の視点が必要だ。
たとえば、虐待の危険なサインの産後うつならば、産婦人科医、あるいは精神科医の意見をきくことが重要であり、歯医者で早期発見されることもあるので、歯科医の視点も重要だ。
こども青少年局には、辻本愛子こども保健医務監の他に産婦人科医と歯科医の先生がいる。
知人から、今回の事例の母親が産後に、うつ状態になっていたという情報を得ていたので、こども青少年局にいる産婦人科の先生にも来ていただきお話を伺った。
私は、当局のいつも通りの事実だけの羅列報告書に非常に呆れていたし、“心中は判断が難しい。想定外” とする鯉渕信也局長の答弁に対し極めて懐疑的であったので、専門家としての見解を聞きたかったからだ。
ところが驚いたことに、今回の事例報告書作成に際し、その産婦人科の先生は何ひとつ関わっていなかったことがわかった。また、歯科の先生がたも関わっていないという。さらに驚いたことに報告書を見たのが常任委員会の当日だったという。
板坂健治児童虐待・DV対策担当部長、鈴木裕子児童虐待・DV対策課長は医療専門職ではない。
横浜市の児童虐待死亡事例の検証報告書には、対策の改善のためには高い専門性と連携が重要であると書かれている。にもかかわらず、こども青少年局それ自体がその提言に忠実ではない可能性がある。
今回の事件の報告書を作成するにあたり、産婦人科医、歯科医という専門性の高い人材が有効活用されていない。その意味でまさに、こども青少年局は “手をぬいた” 報告書を作成したことになるのでは。
なぜ、このようなおかしなことをこども青少年局はするのだろうか。あらゆる視点から児童虐待という難題の解決に真剣に取り組んでいる姿勢であるとは到底思えない。
こんないい加減でお粗末なこども政策を行う都市が、どうして国際都市として自負できるのだろうか。本当に恥ずかしいかぎりだ。
「(殺害におよぶ約2カ月前の) “自宅で転んで、口の中を15針縫うけがをした。” という時点で疑うべきでした。」とその産婦人科の医師が指摘した。それこそ、次の改善の一歩となる的確な指摘だと思った。
高い専門性をもった医療専門職と連携しないこのゆがんだ体質がなぜ生じたのか? こんな仕事の仕方を続けるならば、横浜市の児童虐待対策の根本的な改善はのぞめないだろう。