横浜市の正式運用前の試行期間の問題点-t-PA治療体制を中心に | 不可能をかのうにする かのう重雄 オフィシャルブログ「一つ、ひとつを重ねて」 Powered by Ameba

横浜市の正式運用前の試行期間の問題点-t-PA治療体制を中心に

議会前の風景―その17 横浜市の脳血管疾患救急医療体制

横浜市の正式運用前の試行期間の問題点-t-PA治療体制を中心に


 今年の7月31日、脳卒中の救急医療を考えるシンポジウムが開かれた。共催は日本脳卒中協会神奈川県支部と横浜市支部とサノフィアンベンテイス株式会社。横浜市のみだけでなく、川崎市の公明党市議、県議が聞きに行った。また、本市の健康福祉局医療政策課の職員がかりだされているのに多少の違和感を覚えた。


横浜市と川崎市の体制には大きな違いがある。しかし、聖マリアンナ医科大学神経内科長谷川教授は、両市の脳卒中救急医療に一定の成果があると強調した。横浜市からは横浜市立市民病院の神経内科医師が検証成果を報告した。


発表内容に疑問があるので質問をしようと思ったがその時間すら主催者側はとらなかった。長谷川教授とシンポジスト達だけが話続けていただけだ。一緒に参加していた患者さんたちも憤慨していた。不自由な体をおして、脳卒中対策基本法の成立の署名活動をしている方々だ。このシンポジウムの構成は極めて不自然だった。


少し専門的な話になる。t-PAの治療効果は、その薬を使用した時、どれだけの人に麻痺などの障害の改善がみられるかで判断する。もちろん合併症である脳出血が少ないほどその安全性が担保される。薬を使わなくても、約26%の人が自然経過で麻痺などが消失あるいは殆ど軽快する。この薬を使用した場合、40%の人が、麻痺などが消失あるいは殆ど軽快する。一方、合併症である脳出血を起こしたら、場合によっては死亡、あるいは更に障害が重くなる薬でもある。


自民党斎藤達也議員に教えていただいた資料は非常にためになった。平成17年7月のt-PA治験の審査報告書である。つまり、厚生労働省の認可がおりるためのこの薬の達成すべき効果(33.9%を下回らないこと)と安全性の担保の指標となる脳出血の起こる率の達成すべき低さ(9.6%を上回らないこと。)が数値できちんと示されていた。


“慣れるまで病院ごとの公表など無理ですよ”という長谷川教授の言動は非常に衝撃的だった。すでに横浜市は何の検証もせずに体制を開始している。公表は各病院の評価につながる。公表を嫌がる理由など単純に推察できる。まして行政主導で開始しているのだから市民に対する責任が生じてくる。


そこで、私は去年の秋、医療政策課に資料請求を行った。そして、施行期間の段階で、すでにこの体制に問題があることを認識したのだ。

 病院別の成績は不明。

 t-PA治療対応と判断された患者さん全員が、t-PA治療実施可能病院に搬送されていない。

 t-PA治療成績は自主的に報告した病院からのみでデータで、全例を把握できていない。

 t-PA治療効果は26%と自然経過と同じ。明らかな効果を示していない。

 安全性の担保である脳出血の合併症の有無は不明。


これだけの課題があるわけだから、正式運用する前に、検証し改善策を話し

合う機会などいくらでももてたはずである。検証もせずに正式運用する必要

性が果たしてどこにあったのだろうか。


平成20年度、この脳血管救急医療体制を開始した医療政策課長は前年度ま

で病院経営局担当課長だった。


 初代病院経営局長である岩崎榮氏の答弁を思いだす。“現在はTPAによる治療は保険点数で認められておりませんが、恐らく将来的には認められる可能性があると思っております。そうなりますと、ますます一般的な医療として、それがほかの病院でも行われる可能性は大変高いわけでございまして・・・特化している部分も一般化、普遍化していく可能性が高いと申しあげておきたいと思います。”という。


医療政策はマスだから、ならして考えたら良いというわけではあるまい。患者さんやその家族にとって命はたったひとつしかない。

この生命に対する尊厳さにかけた政策展開は必ず、本市の負の歴史として刻まれると思う。


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