久しぶりの読了。

2019年末の一時帰国の際に親父に薦められ渡された一冊。


神奈川の名門校、栄光学園の歴史研生徒たちを対象として東大教授の加藤陽子氏が行った年末特別講義録がこの一冊になっている。


コンスタントに先生が問いかける質問への生徒たちの回答のレベルの高さにも驚いた。


その一方で、日本という国が開国後にひた走った長い長い戦争の歴史が、どのような因果で、見えない道標に吸い寄せられるかのように戦争に向かっていったのかが何となくわかる気がした。


陸軍の秀才たちが如何に世論操作を周到に行い、また、世界の政治経済情勢と各国の思惑を読み誤って破滅へと進んでいったのか。


背景の一つには人権軽視国家(政府)もあるし、陸軍の闘争心、それ以上に、それに勝るとも劣らない国民の熱狂が大いに挙げられると感じた。


なぜ日本は侵略戦争を反省しないのかという問いに対する加藤陽子氏の答えはとても納得した。


そうか、国民には、我々は日本政府および軍部のの被害者なんだという意識が強いのだ。

戦争に行った息子または主人は、遺骨も回収されずどこで戦死したかも政府が教えてくれない、という被害者意識。


そして、その張本人たる軍部が敗戦後に一旦は解体され、また、日本政府も自らとしての反省もなく極東軍事裁判やGHQによる洗脳とによって解体され、新たな政府として誕生し直したので、本来は一番の悪であった旧日本政府と軍部(特に、大本営と帝国陸軍)がドロンと消えたかのような形なのだ。


対象を若い生徒にしていることもあり、とても読みやすい。

また、日清戦争以来の日本という国の大きな流れ、潮流が掴めるストーリーテリングであった。