薬師寺の修正会と唐招提寺の十一面千手観音

金澤成保 

 

 奈良の薬師寺唐招提寺には、年に何回かお参りをさせていただく。今年の年初は、薬師寺修正会(しゅしょうえ)の法要に参列し、唐招提寺のご三尊にもお参りすることにした。葛井寺の、実際に千手を備えた「真数」の十一面千手観音(坐像)にお会いした時(このブログの「葛井寺の国宝・十一面千手観音像」参照)、深いご縁をいただいた気持ちになりました。やはり「真数」の唐招提寺十一面千手観音(立像)にも、お会いしたくなり、今回参拝することにしました。

 

薬師寺の修正会

 

 古来より、奈良の諸大寺では、お正月吉祥天女をお祀りし、新しき年の国家安穏・五穀豊穣・万民豊楽・除病除疫などを祈願する「修正会」がおこなわれる。吉祥天女は、福よかなお顔とお姿で、我々の願いをやさしく受けとめてくださっているように見える。

 

(写真は、薬師寺HPより)

 ご本尊の薬師三尊吉祥天に、1年の健康や幸せをご祈願する。奈良仏教では、本来初詣は歳の初めに吉祥天に参拝し、前年の出来ごとを振り返り、新しい歳の幸せを祈り生き方を定めるもの、といわれる。薬師三尊は、整って美しく、威厳がある仏様である。もっとも心惹かれる仏様の一つである。

 

(写真は、「奈良市観光協会」のサイトより)

 

 加藤管主による新春を迎えるにあたっての法話を、お聞かせいただいた。神と仏と人生についてのお話の中で、「神仏習合」の背景や、「初詣」は本来氏神様に年初、新年の「契約」を取り結ぶ「初参り」とは異なり、年初に吉祥天女をお参るすることが「初詣」であるとご説明された。法話が終わって管主のサイン入りの著書を買わせていただいた。

 

(写真は、「奈良市観光協会」のサイトより)

唐招提寺の十一面千手観音

 

 本尊・盧舎那仏坐像(国宝)の向かって左側に安置されているのが高さ5.36mの大きな十一面千手観音立像で、国宝である。大脇手42本、小脇手911本、合わせて953本の腕は、バランスよく配され不自然さを感じさせない。本来は1000本あったと考えられている。木心乾漆・漆箔の造りで、奈良時代の制作。盧舎那仏坐像の向かって右側には、薬師如来立像(国宝)が祀られている。

 

(写真は、唐招提寺HPより)

 

 実際に1000本の腕のある「真数」の千手観音像は、日本に3体しかないといわれ、唐招提寺のほか、葛井寺(大阪府)、寿宝寺(京都府)に安置されている。全体的にのびやかな印象と、すずし気な目鼻立ちが印象的。約千本の小脇手と、大脇手に持つ錫杖や宝輪、数珠などの法具・宝物の法力によって、すべての人を救済してくださっている。

 

(写真は、「奈良寺社ガイド」のサイトより)