「日本の心を映す」詩仙堂

金澤成保 

 


 詩仙堂は、正しくは「凹凸窠」(おうとつか)とよばれる。でこぼこした土地に建てた住みかという意味で、元徳川幕府・安芸浅野家の家臣であった教養人の石川丈山が、寛永18年(1641)に隠居のため建てた山荘であった。後に曹洞宗の寺院となるが、丈山にちなんで寺号を丈山寺とされた。チャールズ皇太子とダイアナ妃も訪問されており、当寺が唱える「日本の心を映す」風情を楽しまれたのではないだろうか。

 

 

 

 寺伝によれば、凹凸窠の中心には、江戸時代の絵師、狩野探幽(1602~1674)が描いた中国の漢晋唐宋時代の詩人三十六人の肖像画があり、各詩人の肖像画の頭上には、石川丈山が隷書体にて記した漢詩が書かれている。四方の壁に掲げた「詩仙の間」を中心としていることから、現在は「詩仙堂」とよばれたとされている。詩仙堂のご本尊は、馬郎婦観音(めろうふかんのん)である。

 

(写真は詩仙堂HPより) 

 

 詩仙堂の入口にある小さな門「小有洞」をくぐると、木漏れ日のそそぐ石段がある。石段を登ったところには中門「老梅関」があり、そこをくぐると詩仙堂の建物「凹凸窠がある。その先には情緒あふれる唐様庭園が広がっている。住職の言葉によれば、訪れる方々が毎日の喧騒からのがれ、「心が洗われ、やすらげる」環境づくりを心がけているそうだ。

 

 

 庭園造りの名手でもあった丈山の手になる庭園「百花塢」(ひゃっかのう)は、四季折々に楽しむことができる。とくに春のサツキと秋の紅葉が美しい。縁の前に大きく枝を広げた白い山茶花も見所のひとつである。一般に「ししおどし」(一説によれば丈山の発明とされる)として知られる、添水(そうず)の仕掛けにより時折り響く音は、鳥獣を追い払うとともに、静寂な庭に音のアクセントを与えている。