女性を応援する姫嶋神社

金澤成保 

 

 大阪の臨海部・西淀川に姫嶋神社がある。阪神本線の姫島駅から10分ほど西に行ったところにある。古代、大阪湾のこの辺りは、淀川水系が運ぶ土砂で所々に島ができる遠浅な海が広がっていたと考えられる。

 姫島は古代、難波八十島のひとつであった比売島がこの地に当たると伝えられてきた。『古事記』の応神記には、「昔、赤い玉より化生して美女となった阿迦留姫命(アカルヒメ)が新羅の王子、天之日矛(アメノヒボコ)の妻となり、常に美食を用意して夫に仕えたが、夫は慢心を起こし妻をののしるので、『わたしはあなたの妻となるべき女ではありません。わたしの祖国へ帰ります。』と言って、難波に逃避行してきたとある。

 阿迦留姫命は夫と別れ、海を渡り、摂津の比売島(姫島)に留まったと伝えられ、新たな地で再起し女性たちに機織り裁縫焼き物楽器などを教えたことから、多くの女性に親しまれ「決断と行動の神様」として信仰されてきた。

 

 昭和20年の空襲で、当社も社殿、宝物、過去の文献などすべてを焼失し、過去の記録は残っていないが、境内には正保5年(1648)から幕末まで江戸時代の石灯篭が10基あり、江戸時代以前から、産土神として阿迦留姫命(アカルヒメ)を祀っていたと考えられる。

 この神社は、主祭神として阿迦留姫命(アカルヒメ)をお祀りしていることから、​新しいスタートをきる方を応援する『決断と行動 』の神様、『 がんばる女性 』『 女性の自立 』を応援する神様、『 』 の神様のご神徳があるとされている。

 配神として、​住吉大神(スミヨシノオオカミ)をお祀りしていることから、渡航安全商売繁盛学業向上が、神功皇后(ジングウコウゴウ)をお祀りしていることから、安産・子宝武芸上達子育て・教育にご神徳があるとされている。

 

 

 境内には、元楯社(もとたてしゃ)があり、本殿を守護し、厄除け、災難除けの神さまとして信仰されている。楠社(くすのきしゃ)は、戦争で焼けたご神木の大楠に住んでいた白蛇の神さまを祀っている。

 

 境内末社として金刀比羅宮(ことひらぐう)があり、伏見稲荷大社から勧請し、病気平癒、無病息災、延命長寿などのご神徳があるとされる玉榮稲荷神社(健康いなり)がある。この地で歌われた河辺宮人の歌「妹な名は 千代に流れん 姫島の 小松がうれに 苔むすまでに」が刻まれた万葉歌碑がある。