ふと思い出した。
遠い遠い日、身内の誰かが、「友人が言ってた。源氏物語は『点鬼簿』だと」と言ったのを。
点鬼簿とは、死者の名を記した帳簿のことだ。
『源氏物語』は確かに、ほとんどの登場人物が諸行無常に儚くなっていく。
永遠に若く美しくあり続けることを求める物語が多い中、『源氏物語』は容赦なく登場人物を次々に亡き者としてしまう。
だからその身内の友人は、「点鬼簿」と。
身内のほうは異論があるようだったが、それは聞きそびれてしまった。
その身内ももう、「点鬼簿」の一人となってしまっているけれど。
私は『源氏物語』をしっかり読み込んだわけではないが、
「点鬼簿」、一理あるかもな、と思ってしまう。
紫式部の意図は、分からないけれど。