そして恋が降ってきた【後編】
<第十四章>待ち人 その2
博之の顔を見るまで、
トモコは彼が福岡に来る事が、信じられなかった。
出口のゲートを通る彼の姿が見えたとき
何も考えずに
彼女は走り出していた。
ぎゅっと抱きついて、
彼の胸に顔を埋める。
抱きしめるのは初めてのはずなのに、
彼の体温が、暖かくて懐かしかった。
博之の腕がトモコを包む。
彼女は彼の顔を見上げた。
「会いたかったの。」
トモコは囁いた。
「寂しかった。」
博之の指が、トモコの髪をかき上げた。
そして彼女の唇にそっと触れる。
トモコがうっとりした顔になった。
「俺も、会いたかった。」
博之が目を細め、
愛おしそうに彼女を見た。
「一緒に東京に戻ろう。」
彼はそう言うと、トモコを抱きしめる腕に
力をこめた。
時間がそこだけ止まったようだった。