そして恋が降ってきた【後編】

<第十五章>あずさの餞別

 

 

博之は、白髪が少し目立つが

背の高いイイ男だった。

ストライプのシャツと細身のデニムが似合っている。

 

どうして今まで独身だったのかも、分からなかった。

 

情熱的に抱き合う二人を見たら

あずさはもう、何も心配は要らないと思った。

 

彼女が微笑みながら見守っていると

博之が先に、彼女の目線に気付いた。

 

「ヒロさん、ですね?」

あずさが言うと、彼は頷いた。

「トモママの店で、一緒に働いているあずさです。

トモコさんを、よろしくお願いします。」

 

頭を下げたあずさを、彼はやさしく見た。

「はい。」

頷く彼に、彼女は東京行きのチケットを二枚渡す。

 

「これ、私から二人に。

健太くんを迎えに行ってあげて下さい。」

 

「あずさ・・・・。」

トモコが涙ぐんだ。

 

「もうトモママを離さないでね、ヒロさん。」

あずさが博之の目をじっと見つめた。

 

「はい、離しません。」

彼が言い切ると、

あずさの目にも涙が浮かんだ。

 

「トモママ、私は帰るね。

九州にも時々で良いから、来るんよ。」

「うん、ありがとう。」

 

あずさが姿を消すと、

トモコと博之は

どちらからとも無く手をつないだ。

 

 

 

 

 

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