【しがらみお嬢の奮闘日記】第10話 うちの法事

 

 我が家は田舎の代々続く没落旧家。今回は我が家の法事のお話

 

 家は昔から代々続く本家なので法事になると大勢の人が集まる。そして法事の仕切りは本家の嫁さんの大切なお仕事の1つだ。

昔に比べてだいぶと簡素化されてきたが、やはり50回忌とか「きりのよい年数」の時には法事を行う。私も子どもの頃から法事になると顔をだしていたが、50回忌とかになるともはや顔も見たこともない人でどんな人かも分からないご先祖様にお経をあげる。通常法事の時、お経が終わった後にみんなでその故人の思い出話に花を咲かせ、しみじみと語るのだが50回忌とかになるともう話題にあげようにもネタがなく、結局世間話で幕が閉じることになる。

 

 ます田舎の法事はお寺にみんなが集まって行う場合と、その家にお坊さんを招いて行う場合と2パターンに分かれる。我が家の場合は後者の自宅パターンで行う。

 

 法事の前日にはお客様用の座布団干しから始まり、家中の大掃除で終わる。その他に法事用のお椀、お茶碗、お膳等も納屋からひっぱりだされ、大勢のお客さんをおもてなしできるように整える。

 

 当日、時間になると親戚がみんな集まる。この時にみんなお金やお供えのお菓子や果物を持って来てくれるので、それを受け取ってお仏壇に供える。

 

 そして少し遅れてお坊さん登場。お坊さんは丁重に迎えられお坊さん用の金箔刺繍入り最高級座布団の上に座る。そして簡単な挨拶が始まり、読経が始まる。だいたい40分位で終わる。そして読経が終わったらお坊さんのありがたい説法が始まる。幸いなことに我が家を担当してくれているお坊さんは結構「徳のある」お坊さんなので我が家としては大変満足している。

 

 そして読経と説法が終わるとお食事が始まる。メニューは大抵出前寿司、すき焼き、酢の物、ごはん、おつゆ、お酒、おつまみという相場が決まっている。この時法事にでてくるおつゆに入れる豆腐は決して四角にきってはいけないという風習がある。「豆を四角に切ると角が立つから」というのが理由のようだ。こんな具合に法事の場では結構訳のわからない風習がある。ここで一通りの食事が終わるとお坊さんは退出するようになっている。もちろんお布施、お菓子を半紙に包んでお土産にして持って帰ってもらう。この場合も古いしきたりがあって、お坊さんのお土産のお菓子はどら焼きか最中と決まっているそうだ。他所の法事で、若い奥さんがお坊さんのお土産にカステラとバームクーヘンを持たせたところ、お姑さんからえらいお小言が下ったらしい。

 

 そして法事も終結を迎える頃になると、お仏壇からお供えが下されこれをみんなで分けて家に持って帰るようになっている。こうしてそれぞれがご挨拶をして法事を終えることになる。これが田舎の法事だ。現在では簡素化されてほとんどこういう家も少なくなっているが、年寄りがしぶとく実権を握っている家では今でも時々こういう風習が残っている。

 

 それでは次回はこの法事での会話なんかを紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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