こないだ初めて知った窪 美澄さんという作家の人の「ふがいない僕は空を見る」を読んで、性を題材にしてこんな小説を書ける人がいるんだと激しく感動してしました。


「性」は生きていく上では欠かせないものだけれど、しかしそれが究極の二者関係であり、社会という第三者との関係は本来排除されても良いはずなのが、しかしそうはいかず社会的な価値観との内的・外的な軋轢が時として不幸をもたらしてしまいかねない「厄介な欲望」なんだということが良く描かれていました。


そんなわけで、ではでは2冊目を読んでみようではないかとアマゾンで文庫版をポチったのがこれです。



題名を見た時に感じたのは、①摂食障害とかを抱える思春期の女の子が、内部にある性葛藤に向かい合う話かな?②成人したけどまともな性体験を持たないままある年齢になった女性が、新たな恋人と出会って性に目覚める話かな?

どっちにしてもすったもんだがたくさん描かれるんだろうな、そして、その結果、a.主人公が性的存在であることを諦める、b.主人公が開き直って性的存在であることを肯定する、のどっちかになるのではないかな?

a.を選べばあとがなくなるから、多分b.かな〜とか、とりあえず妄想するわけです。


昨日の火曜日に届いたのでさっそく読み始めました。


ふむふむ。主人公は離婚歴のある女性美容皮膚科医か。なるほど。

世の中に美容外科医はかなりいるけど、美容皮膚科医というのは初めてかも。


昔勤めてたところにはなかったみたいだし、美容皮膚科を専攻しそうな女子学生の顔も思いつきません。

でもやるんだったら、やはり金めあてなのかな〜、せっかく医学部行ったのにもったいなくね?とか昭和生まれは少し引いてしまいます。


読み進めると、なかなか面白い話おじいさんが出てきます。佐藤さんという人で、この人がいわばパトロンの役を果たして主人公の開業を支えるのですが、その見返りが不思議。


更に患者さんにも箕浦さんというなかなかのおばあさんが出てきます。この人も大変重要な役割を果たします。


これ以上書くとネタバレになるので書けませんが、なるほど、と思うような展開でした。大変面白かったです。


ただ、こないだ読んだ「空を見る」のような衝撃はなかったかな。

思春期の男の子の性を巡る現代的な問題を

モチーフにした作品は、それが大いに有り得るからグイグイ引き込まれましたが、今回の「なりたい」は割りと予測可能な中年女の3つの性愛の形を表現しているので、頭をひっぱたかれたような感は薄いです。


とはいえ、この窪さんという作家さんが、いろんな年代における「厄介な性」に焦点を当てた作品をつくる人だということが分かったような気もするので、早くも3冊目はなににすっかな、と探し始めました。


ものすごく乱暴な言い方をすると、柿谷美雨さんがもっと濃厚に「性」を描いたならこの窪さんみたいな作品になるのかな、とか傲慢にも思ってしまいました。







これから3冊目をなににするか考えます。面白い作家に出会えて嬉しいです。