私は福島県の出身です。

福島県は縦に大きく3つの地域に分けられています。

一番真ん中には県庁所在地である福島市や商業都市郡山市があります。中通りと呼ばれます。

その西の新潟よりには白虎隊で有名な会津若松市があります。会津地方と呼ばれます。

一番太平洋側にはいわき市や相馬市を含む浜通りがあります。

つまり、福島県は太平洋側から順に、浜通り、中通り、会津と3つに分割されるのが通例です。


福島県にはいくつかの進学校(東大を含む有名大学への進学者が多いなど)があります。

昔、私が高校生だった昭和40年代のはじめの頃には、①中通りの安積高校、②同じく中通りの福島高校、③浜通りの磐城高校、④会津の会津高校がいわゆる4大進学高として認知されていました。

この頃は男女別学が当たり前だったので、この四つの高校は全て男子高でした。


ちなみに当時の記憶を辿ってみると、私が進学した高校は、3年間、①夏休みはお盆の8月13日の1日を除いて、月から土まで毎日朝から晩まで受験を念頭に置いた補習授業がありました。②冬休みは1月1日を除いて朝から晩まで補習授業がありました。つまり、長期休みは1年生から3年生までの間一回もありませんでした。③日曜日には毎週のように模擬テストが行われその結果は毎回上位50名くらいの名前が職員室の壁に張り出されました。④もちろん教科担当の先生たちにも「休みはありませんでした」。先生たちも盆正月関係なく補習授業をやってくれました。僅かな補習授業代が徴収された記憶はありますが、ごく僅かだったと思います。


「良い大学に入り、良い会社に入ることが一番」が、高校にも日本全体にも共有されていた昔の話です。


なんでこんなことを書く気になったかというと、今日のニュースに、福島県の私立高校が東大進学に関して躍進した、という記事があったからです。

福島民友という地方紙が以下のような記事を載せていました。


「高校別では、東大は安積5人、福島3人、福島成蹊2人、会津若松ザベリオ学園1人、磐城(既卒)1人。京大は安積1人、福島成蹊1人、福島(既卒)1人だった。」


あやや、と目をむいたのですが、安積、福島は東大、京大に合格者を出してます。安積は東大5人だ、すごいな。母校は東大1人のみでした。


しかしそれはどうでもよいのです。

驚いたのは、福島成蹊が東大京大に合格者を出してて、サベリオ学園からも東大に合格者を出してることです。

これはたまげたと思わず拍手してしまいました。


福島成蹊は福島市内に私立の中高一貫校として、特進クラスを売りにして多分10年ちょいくらい前に出来たはずです。ザベリオ学園のことはすみません、私立だということ以外よくわかりません。


なんでこんな話になるかというと、私が現役だった10年くらい前までは「特進クラスを持つ成蹊高校ができたらしい」としか知らなかったのです。私の勤め先の大学を受験する子も少しはいましたが、合格率はそれほど高くなかったのではないかと思います。その時はまだ特進クラスの効果は明確ではありませんでした。


それがたかだか10年で東大理Ⅲに合格者を出すようになったというのは入試に携わったことがあるものとしてはすごいねとしかいいようがないですね。


福島市には東大進学を売りにする福島高校がありますが、そちらを選ばないで中学高校の一貫校である私立高校を選んで、しかも現役で超難関校に合格するということは、先生も生徒も、さっき書いた昭和40年代くらいの進学高校並みの「休みがない」受験勉強をしたのかしら?と思ってしまいます。

調べてないので分かりませんが、もしそうならすごい。

ひょっとしたら(しなくとも)大手の予備校と連携して、受験に特化した課外授業とかやってるのかもですね。公立高校にはできない必殺技です。


この記事を読んで、これから福島県の公立高校は多様化せざるを得ないんだろうなと思いました。

安積、福島は受験校として生き残れるかもしれないけど、磐城や会津は超難関校志向を変えるだけでなく、より広い志望校種に対応できるような「教養」的な色彩を強めざるを得ないんだろな。

だって18歳人口は減るだけだから、どこかが進学校として生き残るのなら、残りは進学しない層を入学させないといくら県立といえども経営が成り立ちません。

しかも福島県では原発事故からの復興に寄与できる人材を育成する「ふたば未来学園中学・高校」が浜通りの広野町に出来て動き始めてるはず。原子力関係の教育はここがメインになるはずです。廃炉即戦力も養成されます。


そうなんです。

13年前の東日本大震災は、実は福島県内の高校の勢力図を塗り替えてしまう結果ももたらしたのです。

浜通りから人がいなくなったのも大きいですが、将来への危機感から一念発起した私立が力をつけてきてます。


あと10年後には、多分県内公私立高校だけでなく、大学まで含んだ大きな変化が起きてるんだろうなというのが、東日本大震災発災13年の日の感想です。





今朝は13年前と違って暖かな朝でした。