仮執行の宣言を付した損害賠償命令とは? | 債権回収と強制執行の取扱説明書

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Q.仮執行の宣言を付した損害賠償命令とは?


A.犯罪被害者保護法における損害賠償命令について,仮執行宣言が付されている場合のことをいう。


損害賠償命令

民事執行法22条3号の2によれば,「仮執行の宣言を付した損害賠償命令」も債務名義となると規定されています。


民事裁判であれば,通常,損害賠償請求権は「判決」によって認容されます。つまり,損害賠償の「命令」というものは原則としてありません。


損害賠償命令とは,刑事手続と関連する特殊なものです。この制度は,「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(犯罪被害者保護法)」によって規定されています。


すなわち,損害賠償命令とは,犯罪被害に基づく損害の賠償請求の裁判を,刑事手続と連動して行うことによって,犯罪被害者に対する確実で迅速な損害賠償の支払いを図るという制度です。


この損害賠償命令は,刑事事件の被告事件を担当する裁判官が,被告事件と付随して審理を行い,命令を出すことになります。


債務名義となる「仮執行の宣言を付した損害賠償命」

上記損害賠償命令に対しては,異議を出すことができます。命令の送達の日から2週間以内に適法な異議がなされると,損害賠償命令申立て事件は,通常の民事訴訟へと移行します。


もっとも,損害賠償命令には,仮執行宣言を付けることができるものとされています。


つまり,異議が出されると,損害賠償については通常の民事訴訟で判決がなされ,それが確定するまでは債務名義 とならず,強制執行できないのが原則ですが,仮執行宣言を付けることによって,判決が確定する前であっても債務名義となり,前もって強制執行することができるようになるのです。


ちなみに,損害賠償命令の場合,適法な異議がなされても,仮執行宣言の効力は失われません。