「無力を選ぶ」

 

 現実の世界における無力な状態を、永遠の世界を思ってあきらめる、

ということがあります。

 

しかし、現実の世界で有力であることが、

永遠に対する感覚を鈍磨さすことをおそれ、

永遠の世界を生きることこそ人生の一大事と考えて、

あえて無力な状態を選びとるということもあるのです。

 

そして、無力が担っている永遠を、生きようとすることがあるのです。

 

無力とは、現実の矛盾を担っている永遠の姿であり、

有力とは、永遠を忘却している現実の姿なのです。

 

無力をあえて選びとる、ここに永遠を生きようとする者の祈りがあります。

 

 

 

『灰色の断想』p96 藤木正三著

 

ekyoukaiは良い教会(ekyoukai.org)から転載