ふと思い立って机の引き出しを整理していた


転がりでてきた




モンブランの万年筆


彼が大切にしていたものだ


1日だけの約束で借りた


でも 返せなかった 別れたからだ




私の我が儘での 一方的な別れ




彼への思いが 万年筆とともに 一挙によみがえってきて


胸が苦しくなった




会いたい




おそるおそる 彼の携帯に電話してみた




なんだ 君か 久しぶりだね 何の用




冷たい答えに ひるみながらも万年筆のことを告げた




あーあの万年筆 君の所にあったのか


大切なものなんだ 返してくれる?



やはり 私はもう彼の心には棲んでいないんだ




でも 万年筆を返すためだけの約束をした




明るいガラス張りの喫茶店


彼は無表情だった




これ




ああ ありがと


それと ねえ お返しがあるんだけど




彼は小さな箱を取り出した




開けてみて




涙型の ダイヤの指輪だった




君に渡すつもりで買ったからさ 誰にも渡せずに困ってたんだ 


受け取ってくれる?



彼は笑顔に変わっていた



そして私は 大粒の涙を流していた