よく晴れた秋の午後だった


僕は知り合いの家へと車をゆっくり走らせていた


そこに自転車が飛び出してきた 急停止


自転車は転んだ 驚いた僕はあわてて車を降りた




大丈夫ですか




うん 大丈夫 かすり傷一つないわ




その時顔を見合わせてお互いに あっ と言った




高校のクラスメイトだった それも気持を告げも出来 なかった片想いの


二人とも時間があったので 近くのファミリーレスト ランでお茶を飲んだ




久しぶりだね あれからどうしてる 彼氏出来た?




んー 何人かつきあったけど皆一回で別れた あなた は?




僕は不器用だから ずーっと一人さ




あら ちょうどいいわ




そんなわけで僕らはつきあい始めた


クリスマスが終わり 正月が来て やがて春になった




高校に行ってみない?彼女が切り出した




僕は同意し 懐かしい高校を訪れた


勿論学校には入れない 入学式の看板が掲げてあった


外壁から満開の桜が張り出している


そのとき 風が吹き 桜吹雪が君を包んだ


振り返った君は 一枚の絵のように綺麗だった


君は言った




ねえ 知ってる?私は入学式の日にあなたに一目惚れ したのよ


なのに三年間知らんぷりだった




僕は言葉を失った なんと遠回りしたことだろう




その時学校の鐘が鳴った




手紙


ある日彼女から手紙が届いた




口でも言えない 携帯やメールでも伝えられないから  手紙を書きます


初めてあった日から私はあなたが好きでした


でも いつもあなたの周りは女の子でいっぱい 私な んか出る幕はないと諦め
ていました


今回心の内を告げることにしたのは そんな自分に愛 想をつかし


両親の住むシンガポールに 引っ越すことにしたから です


もう会えませんね 好きでした お元気で




僕はびっくりした 僕が唯一好きなのは彼女だからだ


すぐに電話を入れた




引っ越しの用意で忙しいから 家に来てくれたら会え るわ




僕は車を飛ばして彼女の家に向かった


彼女を失ったらどうしよう




彼女の家に着くと彼女はホースでのんびり玄関先に水 をまいていた




あら 早いわね まあ 入って




彼女の家はどの部屋も整然としていて 段ボール箱一 つ見あたらなかった




シンガポールに引っ越すというのは嘘よ


あなたはいつまでたっても 私のこと見てくれないか ら 一芝居うったの


よかった 来てくれて




僕は唖然としながらも ほっとした




いいかい 君を失ったら僕は発狂するぞ


僕だけのものになってくれ


もう他の娘とちゃらちゃらしないと誓うから




彼女は後ろを向いて ほくそ笑んでいた