先日は、新幹線ではじめて重大インシデントとなる、事故が発生してしまいました。

 

走行中に脱線の可能性もあった重大な事象です。
 
現在まで様々な報道がされていますが、
博多発の「のぞみ34号東京行き」(16両編成N700A)の一部台車から重大な損傷が発見され、急遽、名古屋駅にて運転を中止したという内容です。
 
14日深夜~15日未明にかけて、名古屋駅に停車中の車両のうち、14号車~16号車を切り離し車両所へ移動させる作業が行われ、ニュースなどで切り離された車体が確認できました。

新幹線では事故が無い、という様な安全神話がありましたが、幸いと人的被害の無かった今回の事故を、私は良い教訓として欲しいな、と思いました。
 
安全神話なんてお話しは、驕り以外の何ものでも無いからです。
 
そして、ひとつ検証しなくてはならないことは、
 
西日本管内では、2時間28分も掛けて得た答えが『運転に支障無し』、
 
片や東海管内では、僅か50分で『運転中止』。
 
この違いは何だったのか?
 
勿論 、時間の経過による状況の悪化が、発見されやすい方向に走ったことも認められますがそれだけではないと思います。
 
また、直接、事象の対応に当った係員を批判している訳でもありません。
 
その係員を育てるべき事業者に問うているのです。
 
ラストマンを育てていますか?
 
ラストマンは、いくら機械やコンピュータが発達しても、最終的な判断は、経験や多彩な知識が蓄積された人間が行うというものです。
(ラストマンの詳細にあっては、元・日立製作所取締役会長川村隆著「ラストマン・・・・」2015(平成27)年角川書店をご覧ください)」
 
西日本会社は、過去に大きな事故を起こしてしまい、それ以来、安全に関しては非常に多くの改革や改善を並々ならぬ努力を経て、こと細かくおこなって来ました。
 
ある従業員によると、始業時の点呼では事前に暗記させられた「安全憲章」なるものを唱和して安全を誓うそうです。
 
しかし、精神論的な「安全憲章」の唱和など、私たちユーザーは求めていません。
 
求めているのは、「安全」です。

安全憲章の4番目には、「判断に迷った時は最も安全と認められる行動をとらなければならない」と記されています。
 
今回の場合は、「まず止める」ことだったように思われます。
 
鉄道の職場で係員さまとお話しすると、会社の大小問わず、必ず出て来るのが
「いつもと違ったら、まず止める」「最後は人間」と言う言葉。
 
事業者は、その最後の人間がちゃんと「判断」する力を持てるように育て、更に「権限」をちゃんと与えておかなければなりません。
 
今回は、その辺りの違いが出てしまったのではないでしょうか?
 
 
今回の事例に対して、国土交通省運輸安全委員会は、新幹線で初めて重大インシデントと認定し調査を進めています。
 
今回は大きな事故が起こらずに済みましたが、場合によっては脱線転覆事故に繋がり多くの犠牲者が出ていたと考えられます。
(・・これほど大きな事案に対して、報道があまり大きくならないのが気になります・・・。)
 
しかし、重要なのは同じようなトラブルを2度と発生させない取り組みです。
 
日本の鉄道は、三河島・鶴見事故以降、列車の運行に対する保安システムが改良され、また、桜木町事故や北陸トンネル火災以降、車両の防火対策が強化されています。
 
実は新幹線も、1964(昭和39)年開業以降の長い歴史の中で、重大事故に繋がりかねないトラブルが多く発生しています。
 
しかしながら、いつも重大事故一歩手前で止まり、改善、教育し、今の新幹線があります。
 
今回の件も、しっかりとした研究や実験を重ね、今回の事例に至らない安全向上に向けた取り組みがなされていくと信じています。

最後に、
本件に関して、直接当該機関には取材をしておりません。この時期に、個人ベースの取材は先方に対して無用な手間を取らせるものであり、それは当方の意図するものでは無いからです。
また、新聞やニュース、個人的に親交のあるJR関係者の方からのお話しなどをソースとして記させて頂きました。
よって、事実との若干の相違があれば、深くお詫び申し上げます。
当方はあくまでも、利用者目線での論評を心掛けていますので、これらも一般の方々からの目線の一つであるようにお考え頂ければ幸いでございます。
 
※調査中の事故でございますので、わたくしの拙い個人的な考えを記させて頂きました。皆さまの色々なご見解もあると思いますが、現時点でのコメント欄は設けておりません。何卒ご理解くださいませ。
 
 
 
2017年12月15日現在  渡部史絵