幼いころ、夢中になっていたことを思い出してください。

きっとそれが、あなたの本当にしたかったことです。

思い出せたら、チャレンジしてみる。

まずは初めて見ることです。

 

 

 何か情熱を傾けられることをしたいけれど、それが何かわからない。今やっている仕事は、自分が夢中になれる仕事なのか。今の暮らしに、とりたてて不満があるわけではないけれど、どこか充実感を得ることができない…。そんな漠然とした不満を抱えながら生きている人が多いと聞きます。

 ひと言でいえば、何ともぜいたくな悩みであると思います。

 毎朝目が覚めて、窓を開けて外を見る。天気のいい日には心地よい風が頬を撫でてくれます。雨の日には優しい雨の匂いが部屋の中を包んでくれます。

 一日が始まり、今日やるべき仕事もあるでしょう。家族のために家を守るという役割もあるでしょう。

 考えてみてください。そんな幸せなことがあるでしょうか。今こうして生きているという幸福感。そのことに目を向けて、感謝の気持ちをもつだけで、余計な不満はなくなると私は思っています。

 それでも「そんなことは十分に分かっています」といい「自分が思いきり夢中になれる何かを見つけたいのです」という人がいます。

 そういう人たちに、私はいつもこんなアドバイスをします。「あなたが幼かった頃のことを思い出してはいかがですか」と。

 

 幼いころ、誰もが夢中になっていたことがあるものです。お人形遊びが大好きだった人や、外で走り回ることが好きだった人もいるでしょう。家に帰る時間も食事すら忘れて、何かに夢中になっていたあの頃。そこには何の計算もありません。損得勘定や計らいごとなど入り込む余地などありませんでした。ただただ自分の好きなことに夢中になっていたはずです。そんな純粋な心を思い出してみることです。

 中には、そのころに夢中になっていたことの延長線上で今の仕事をしている人もいるでしょう。絵を描くことが大好きで、今は画家になっている。お菓子作りが大好きで、今はパティシエや和菓子つくりの職人になっている。そんな幸せな人もいますが、それはほんの一握りだと思います。ほとんどの人は夢中になっていたことから離れ、別の世界で生きているものです。

 かといって、かつて情熱を傾けていたことを諦めることはありません。インターネットの発達により、活動できる場をもつことや仲間と出会えることなど、情報収集は昔よりずっと簡単にできるようになりました。たとえ収入に結びつかなくても、趣味としてでも、とにかく始めてみることです。または、小さいころに憧れていた仕事にチャレンジするのもいいでしょう。

 

 成長するにつれて、私たちは情熱を傾けていたものを忘れてしまうものです。「それよりも大事なこと」があるように思い、それを優先することが大人になることだと思ってしまうのでしょう。

 でも、損得勘定など持ち込まず、他人の目など気にせずに、幼いころに夢中になった自分を思い出して、正直に生きてみてはいかがでしょう。

 昔のアルバムを開いてみてください。そこに映っている自分の満面の笑顔を見てください。その一枚の写真の中に、きっとヒントが隠されているはずです。