面壁九年(めんへきくねん)

わき目も降らずに今与えられた仕事に集中すること。投げ出さずに継続すること。それが成功への近道です。禅宗の初祖である菩提達磨大和尚は、中国の少林寺で9年間、ひたすら壁に向かって坐禅をしていたという伝説があります。これほどの継続があればこそ、悟りを開くことができたのです。

 

 

 仕事に対してやる気はあるけれど、実力がまだまだ伴っていない。焦る気持ちばかりが募って、失敗をしてしまう。こういう悩みを持つ人というのは、生真面目な人だと私は思います。ただし、必要以上に焦ったり落ち込んだりしてはいけません。どんな仕事でも、一人前になるには何年もかかるものです。数か月や二、三年で完璧にできるような仕事などありません。まずは目の前の与えられた仕事とじっくり向き合い、そこに精神を集中させることが大事です。

 自分には力がない。まわりの人についていけない。そう思ってしまうのは、周りの人と比較しているからです。社会というのは相対的なものですから、他人と自分を比較するのは仕方のないことでしょう。比較することで見えてくるものもあります。でも大切なことは、誰と何を比べているのかをよく考えることです。

 人が持っている能力は、それぞれ違いますから、単純に比較することはできません。まわりの人と比較して、よし自分も負けないようにがんばろうと思うのならいいのですが、そこで落ち込むようならば、不要な比較はしないことです。自分を信じて、今の仕事を一生懸命に続けてください。人間国宝になったある職人さんがいっていました。「人間国宝を目指して仕事をしていたわけではありません。毎日の仕事を淡々と六十年続けたら、知らないうちに人間国宝にされていたのです」と。