「快楽」より「安楽」

―人生で大事なことはここにある

 人間は「快楽」を求めてやまない生き物かもしれません。しかし求めるまでもなく、「快楽」は日常の中にたくさんあります。たとえばおいしいものを食べて「ああ、おいしかった」、本を読んで「あー、おもしろかった」、ぐっすり眠って「あー、気持ちよかった」・・・そういった「小さな快楽」があれば、十分ではないですか。

 なぜなら、「快楽」というのは一瞬で、求めても求めても、その場で消えていくからです。「快楽」を求めすぎる人は、やがて「小さな快楽」にむなしさを覚え、もっと、もっとと「おおきな快楽」を求めるようになってしまうのです。

 つまり「快楽」を求めれば求めるほど、それによって得られる満足感・幸福感が小さくなる。結局、毎日イライラして一生を終えることになりかねません。

 ふつうに暮らしていれば、いくらでも「快楽」は得られます。どうせなら「安楽」を求めたほうがいい。「安楽」は「快楽」の対極にあるようでいて、似ています。「小さな快楽」が積み重なって、継続していく、それが「安楽」なのです。日々、心穏やかに暮らしていくことに、人生の目標があるとわたしも思っています。