上へ、上へと、より高いところを目指す人たちは、適宜“ひと休み”を入れているでしょうか。

 中には「競争社会を勝ち抜くには、少しも休んでいる暇はない」と思い込み、それが強迫観念のようになって「休むのが怖い」とすら感じている人もいるでしょう。

 しかし、それでは逆効果。泳ぎ続けないと死んでしまうマグロではないのですから、疲れがたまる一方です。休みなく登り続けたところで、仕事の効率は下がるし、気力も体力も落ちるなど、いいことは何もありません。

 ここは“踊り場効果”を利用しましょう。

 100段、200段と続く長い階段は、ずっと上り続けていると嫌になりますが、踊り場があるとかなり楽になります。ちょっと一休みできるので、たちまち元気が回復し、苦痛が半減します。

 しかも、段差を重ねるうちに、踊り場の位置は高くなりますから、見える風景が違ってきます。これが大変な気分転換になるうえに、脳を活性化させる刺激にもなりうるのです。

 人生や仕事のプロセスにおいては、意識して「踊り場で一休みする」時間を設けることが大切です。

 そこで、階段の上から下を眺めるように、じぶんがいままでやってきたことをちょっと振り返ってみる。あるいは今自分のいる位置から四方八方を見渡し、これからどう進んでいくべきかを考える。

 そんなふうにして「考える時間」を持つといいでしょう。時には新しい風景に刺激を受けて、いままでにはなかった発想が得られるかもしれません。

 何も休日を取らなくたっていいのです。朝の10分とか20分、ぼーっと外の景色を眺めたり、仕事の合間にちょっと屋上とか高層階に上がって空を見上げたり、“下界”の喧騒を見下ろしたりするだけでもいい。ようは「心静かに考える時間」を持つことが大切なのです。

 組織の舵を切るリーダーの仕事は、大半が「考える」ことではありませんか?そこを忘れて、考える時間をないがしろにして走り続けても意味はないのです。「いや、私は休まなくたって、四六時中考えているよ」という人がいるかもしれません。でも、ただ考え続けているだけでは「下手の考え休むに似たり」で、時間が経つばかりで何の効果もありません。ちょっと休んで気持ちを解きほぐして、改めて考えるからこそ、正しい方向性が見えてくるし、新しいアイデアも湧いてくるのです。

 

「七走一坐」は、休む大切さを教えてくれる禅語です。

 直訳すれば、「7回走ったら、1回座りなさい」ということ。リーダーの皆さんは「ある程度やったら、立ち止まって自分を見つめ直しなさい」というふうに読むといいでしょう。

 いったん立ち止まることは、じつはゴールに到着する一番の「近道」なのです。