教わるとき注意したいのが、教わりっぱなしにしないこと。

「これについては、こんな本が出ているよ」と教わったら、必ずその本を読みます。自分なりにさらに学んで発見があれば、逐一報告します。さらに、おかえしもできたらもっといいでしょう。

 知人がある時、日本文化研究者の角田柳作さんについて教えてくれたことがあります。

 角田さんは東京専門学校(のちの早稲田大学)を卒業して教師になり、明治42年にハワイに渡って教鞭をとります。その能地、40歳でニューヨークのコロンビア大学に学んだ後、「日本文化研究所」を創設したそうです。

「この人の存在があったからこそ、正しい日本というものが、ずいぶん外国に伝わったんだよ。『無名の巨人』と言われているけれど、こういう立派な人の存在は、無名のままにさせちゃいけないな」

 知人がぽつんと言った明くる日から、僕は夢中になって角田柳作さんについて調べ始めました。ドナルド・キーンによって書かれたもの、司馬遼太郎の『街道をゆく』など、角田さんについてのさまざまな資料が出てきたので、自分なりに分類しました。

 それから知人に「このあいだ教えていただいた角田柳作さんについて調べてみたんです」と報告します。さらに「これはもしかするとお持ちでない資料かもしれませんので、コピーをお送りします」と、自分なりに知識を積み上げた、おすそわけもするのです。

 教わりっぱなしにしない気持ちを行動で示せば、もっともっと、いろんなことを教えてもらえます。何より、教えたほうも喜んでくれるのです。

 知ったかぶりをせずに、教わり上手へ。

 教わり上手から、教えてくれた相手とのさらなる深いつながりへ。

 こんな連鎖は、何度繰り返しても楽しいものです。