仕事を輝かせるリーダーの心得

「あれをやらせたら、あの人の右に出る人はいないね。まさに天職だね」

 これは大変な誉め言葉です。自分でも今やっている仕事が「天職」だと思えて、人の目にもそう映るとしたら、こんなに幸せなことはありません。

 それにしても「天職」とは、なんなのでしょうか。「天から命ぜられた職」もしくは「自分の天性に最も合った職」という意味ですが、改めて「あなたの天職は?」と問われると、よくわからなくなるのではないかと思います。

 答えは簡単です。今、あなたが取り組んでいる仕事こそが「天職」なのです。

 今の仕事を選んだ時、あなたは少なからず「自分に合っている」と思う部分があったでしょう?

 それにもかかわらず、すぐに「合わないな」と感じて転職したり、辞めてしまったりするのは感心しません。いつまで経っても「天職」と出合えないことは目に見えています。

 なぜなら、「天職」は出合うものではなく、いまの仕事の延長線上にあるものだからです。たぶん「合わないな」と感じても、辞めずに続けていくと、やりがいが出てきます。それがやがて「天職」に変わっていくのです。

 つまり、いまの仕事を「天職」に変えるかどうかは、自分しだいなのです。

 「大地黄金」

 この禅語は、「自分が置かれている場所で精いっぱい尽くせば、その場所が黄金のように輝いてくる」という意味です。黄金の大地は、最初から存在するものではなく、自分がいまいる場所が黄金の大地になるのです。

 「天職」も同じ。リーダーは、人生にあらかじめ用意されている職業・役職を追い求めるのではなく、自分からやりがいを見つけて今の自分の仕事、部下の仕事を輝くものに変えていかなければならないのです。

 あなたの人生の主人公は、あなた自身です。それをしっかり自覚して、黄金色に輝く人生を作っていきましょう。

 

 ちなみに「主人公」という言葉も禅語です。瑞巌和尚という方は毎日、自分自身に向かって「主人公」と呼びかけ、

「はっきりと目を覚ましているかい?」

「はい」

「人にだまされないようにしなさいよ」

「はい」

 というふうに自問自答をしていたそうです。「もう一人の自分」との対話をしておられたわけです。

 それはとりもなおさず、自分が主体となって生きる、ということです。あなたも和尚にならって、自分自身と問答をしてみるのもいいかもしれません。

「今の仕事は天職か?」

「はい」

 というふうに。仕事に向かう気持ちがより高揚していくでしょう。