禅が目指しているもの―それは、「いかにして心を整えていくか」ということです。しかし、心を整えなさい、と言われても、漠然としていて何をしたらいいのかわかりません。そもそも、心の動きを自分の力でコントロールすることは非常に難しいものです。

 それでは、心を整えるためにどうしたらいいのか。禅の修行においてまず重視されるのは、自らの立ち居振る舞いを整えることです。

 禅には、「威儀即仏法」という言葉があります。威儀を正すことが仏の法(教え)を学ぶことになる、という意味です。

 仏教では「行住坐臥」、つまり、歩く(行)、とどまる(住)、座る(坐)、寝る(臥)という日常の行動を、「四威儀」と言います。これは、人が一日に行うすべての行動を表す言葉です。すなわち、威儀を正すとは、どんなときでも、どのような場所にあっても、その場にふさわしい立ち居振る舞いをすることであり、それこそが禅の修行であると言えるのです。

 また、仏教では、「三業」を整えることがよい縁を呼び寄せる、と考えます。三業とは、「身業」「口業」「意業」の三つ。「身業を整える」とは、一つひとつの所作、立ち居振る舞いを整えることです。「口業を整える」とは、愛情のある温かい言葉遣いをすること。「意業を整える」とは、偏見や先入観などにとらわれず、やわらかな心をもつことです。

 これら三つは、お互いに結びついています。自分の立ち居振る舞いを意識して整えていくと、自然に言葉遣いが整い、言葉遣いが整うとさらに心の状態も整ってきます。その結果、人はより良い人生を歩むことができるのです。もし「心が乱れている」と感じたら、日々の立ち居振る舞いを見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。

・威儀即仏法

―日常の立ち居振る舞いを整えることによって心はおのずから静かになる。

立ち居振る舞いを整えると、自然に言葉遣いが整い、心も整います。

心が乱れていると感じたら、まずは自分の立ち居振る舞いを整えてみてください。