私たちが生きるうえで、目標をもつのは大事なことです。目標があるからこそ、努力もするし、続ける意欲もわいてくる。ただし、目標を達成することにこだわりすぎてはいけない、と私は思います。

 ランニングブームと言われる昨今、街中や公園をさっそうと走り抜けるランナーの姿をよく見かけるようになりました。中には、中高年になってから走り始める人も少なくないようです。

 最終的にはフルマラソンを完走したいと考え、「毎日必ず何キロ走る」という目標をもつ人もいるかもしれません。高い目標を掲げ、それに向かって邁進するのは素晴らしいことです。しかし、結果を出そうとしてがんばりすぎてしまうと、脚を故障してしまったり、走ること自体が大きなストレスになったりと、途中で挫折することにもなりかねません。

 日本人にはきまじめなところがあり、自分が立てた目標に対して、「やらねばならない」という思いに縛られてしまう人が多いようです。体調がすぐれない日や、雨が降って足元が悪い場合は、走る距離を短くすればいい。何なら休んだってかまわないはずです。

 ところが、「何としてもこの距離を走らなければならない」と無理をしてしまうんですね。それは、執着しているということ。目標を達成することに執着すると、自分自身を苦しめることになります。

 人は時として、「ねばならない」という考えに取りつかれてしまいます。その考えにこだわると、自分にとって大きなストレスとなります。それが他人に向けられれば、「押しつけ」や「余計なお世話」になってしまうでしょう。

 執着や偏見、先入観といった固定観念や思い込みをすべて手放した自由自在な心のことを「柔軟心」と言います。言い換えれば、何物にもとらわれないやわらかい心のことです。

 大切なのは、「必ずこうしなければならない」と思いつめないことです。掲げる目標も、「できればこうする」くらいの緩やかなものにしてはいかがでしょうか。そのようにやわらかな考え方をすることによって、気持ちに余裕が生まれ、人生は生きやすくなります。

 目標を達成することにこだわらず、そこにたどり着くまでの過程を楽しむ。そうした柔軟な姿勢で生きることが、よい結果を生むことになると思うのです。

・柔軟心(にゅうなんしん)

―固定観念や思い込みを捨て去り、自由でやわらかな心をもつ。

「必ずこうしなければならない」と思いつめないことが大切です。

やわらかな心で目標をとらえ、家庭を楽しむゆとりをもちましょう。