人生の醍醐味は、どこにあるのでしょう?

 それは、人によっても違い、答えがないところだと思います。

 「これが最善だ」と選んでも茨の道だったということもありますし、「この選択は失敗だった」とがっかりしても、辛抱強く進んでいけば、思わぬ展開で成功に転じることもあります。

 これまでお話ししてきたように、たとえば、AとBの二つの道があったとして、どちらを選んでも「正解」であり、自分次第で不幸せにも幸せにもなります。

 ですから、どの道を選ぼうが、安心して進んでいけばいい。

 人と自分を比べる必要もないし、過去や未来に振りまわされることもない。

 それがわかると、人生が俄然おもしろくなってきます。

 執着や欲、世間の常識などにとらわれず、自由自在に物事を選択していけるからです。

 そのような何物にも固執しない、さわやかな境地を表すのが、「千里同風」という禅語です。

 この場合、千里は「あらゆるところ」という意味です。千里離れていても、同じ風が吹いている。つまり、どこへ行っても同じ状態で、世の中がよく治まっている様を表します。

 この世界は、あまねく仏の真理に守られています。そこで生きる私たちは、どこで何をしていようとも、力の限りを尽くして生きればいい。

 自分を無理に追い立てる必要もなければ、自分以外の誰かになろうとする必要もない。

 あるがままの自分をあるがままに生きる。すると、どんな時も「今が楽しい」と言える人生が待っています。

 もし、何を選べばいいのか答えが出ないというのなら、その時は、ただ待ってみればいいのです。時が満ちれば、おのずとひとつの道が見えてきます。

 これほど、楽な生き方はありません。

 そしてこれが、私たち本来の生き方なのです。