へそくり | 鹿吉の徒然なるままに by Shicayoshi Cake Lab.

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ひとつひとつを丁寧に、食べてくださる方を想って焼き上げる、を信念に掲げた焼き菓子屋の徒然なる日々を綴っております。

じーじとばーばんちの思い出

 

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#じーじとばーばんちの思い出について書こうと思う鹿吉です。

こんばんは!

 

私はよく祖母宅に泊まっておりました。

祖父の朝が異常に早いことも、祖母の信心深さが早朝から炸裂することも、朝ごはんのお味噌汁がめちゃくちゃに美味しいことも、同じ職場に行くのに祖父は車で祖母が自転車で行くことも、そして自転車を押しながら一緒に歩いて私を学校へと送ってくれたこともとても心をほわっと暖かくする思い出にございます。

 

祖父の朝は4時でございました。

祖父宅に泊まるとお布団を座敷に3つ並べて川の字で寝ますので、祖父が起きれば自然と目は覚めます。実は3時過ぎくらいから祖父は目覚めているのですが、その時間に起き出すと祖母が怒るらしく、4時まではお布団で大人しくしているんだ、と祖父は内緒話でもするようにお茶目に教えてくれました。確かに3時過ぎくらいからお布団の中で祖父はゴソゴソとしていたような気がいたします。4時に祖父が起き、祖母も起きます。

私はそんなに早くから起きることに無駄な抵抗を示して、寝たふりをしてお布団を被っておりました。

 

ですから祖父が起き出してから何をしていたのかは不明でございますが、祖母は続き座敷の仏壇の前に座り、朝の読経をいたします。木魚を軽快に力強く、ぽんぽこぽんぽこ響かせながらお経を読み上げるのでございます。これがまた長い!!!

30分くらいは続いたような気がいたします。

それが終わると祖母は仏様と神様のお膳の準備に朝食の用意、お洗濯から掃除に入ります。

5時には朝食の用意が整いますので、お布団を引っぺがされて食卓へと付かされます(笑)

 

そのあと二度寝を敢行しようとすれば、すでにお布団は押し入れの中へと仕舞われておりまして、仕方ないのでよく陽の当たる縁側で日向ぼっこをしながら学校へと行く時間までゴロゴロとしておりました。

 

祖父母の日常をこのように垣間見ていた私は祖父母のへそくりの場所もよく知っておりました。

祖父は仏壇と飾ってある額の裏側にへそくりしておりました。ときおり「ここに置いておくんだ、内緒だぞ」と一緒に隠したりもしました。

それが宝を隠すようでとてもワクワクしたのを思い出します。

 

祖母はキッチンの至る所に隠しておりました。

けれども毎回堂々と隠し場所から出しておりましたので、へそくりというイメージはなく、

 

変なところにお金を置いておくんだな

 

と思っておりました。

 

ある日、祖父が血相を変えて帰ってくると自分のへそくりを全部集めて銀行へ行かなくては!と言い出しました。驚く祖母に祖父は近所で聞いてきた話を捲し立てるように話し始めたのでございます。

 

86歳のひとり暮らしの男性がおりました。

息子夫婦とは別居で、ひとりで借家に住んでいたそうにございます。

2DKの小さなボロボロの借家にいたことから誰もが予想外だったそうなのですが、その男性は家族に迷惑を掛けないためにと老後の資金を貯め込んでいたそうにございます。

 

「86歳だったら充分老後でしょ?」

 

まだ60代だった祖母が言いました。

確かに老後の域には入っております。

 

「本人が老後の資金って言うんだから、そうなんだろう。いや、それどころじゃあないんだ!」

 

祖父が話の続きを語気を強めて言いました。

 

「その貴重な老後資金をな、なんとタンス預金してたらしいんだけどな!」

 

なるほど。

銀行は信用ならん、と身近に置いておくタイプだったわけだ、と黙って話を聞いていた私は思いました。なんて危険な香りのする話だろう、と。

 

「それを根こそぎ空き巣にやられちまったらしいんだ!」

 

なんだって~ッ??????!!!!!!

そりゃあ祖父が慌てるのも頷ける、と納得。

家にある現金を銀行へ預けたくなる気持ちが痛いほどわかります。

 

「いくらなの?」

 

祖父の話に驚く祖母。

興奮して鼻の穴が広がっている祖父は衝撃の一言を放ちました。

 

「7000万だと!!!!」

 

巨万の富~ッ!!!!!!!!!!

 

それだけの現金をタンス預金できる胆力、凄まじい!!!!!

空き巣に入られた男性は生ける屍のようになってしまっている、という話で終わりを告げると、祖父はバタバタと忙しそうに家中を動き回っておりました。

 

あくまで近所の噂話程度で、実際に起こった事件なのかは不明でございます。

けれどもあながちない話でもないな、と思わなくもありません。

今はもう祖父は他界し、祖母は施設へと入所しておりますので、祖父母宅というものは存在していないようなものにございます。私の過ごした思い出の場所は失われております。

 

それでも鮮明に思い出すのでございます。

縁側の気持ちよかった日向ぼっこ。

朝から耳を塞ぎたくなるほどの大音量の木魚の音。

私好みのご飯とお味噌汁の美味しさ。

お茶目な様子で内緒話をしてくれる祖父の表情。

祖父が面白い話をする度に眉を顰める祖母の顔。

慣れない和式トイレが怖かったことも、寒いお風呂も、危ないから上がってはいけないと注意をされていた2階にこっそり侵入して遊んだことも、祖母の着物が置いてあるタンス部屋に行っては祖母が軽妙にミシンを使う後ろ姿を眺めていたことも、何もかも鮮明に覚えているのでございます。

 

今はもう失われてしまった場所かもしれません。

けれども私の中でしっかりと残っている思い出の場所にございます。

 

これからも大切に記憶していきたいな、と思う私は今日も元気に焼いております。

アメリカンクッキーにございます。

 

香ばしいナッツとバターの風味が美味しい軽い食感の焼菓子となっております。

ナッツ、酒粕、チョコチップ、チョコレート、フルーツと5種類ございます。

どれも豊かな味わいでおススメにございます。

 

ついつい食べてしまう珈琲のお供でございます。

是非一度ご賞味くださいませ~

 

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ちなみにその後、祖父母のへそくりがどうなったのかは存じませんが、暫くすると祖父が内緒だぞ、とへそくりを見せてくれましたので、再開したようにございます(笑)

 

あの茶目っ気溢れた祖父の「内緒だぞ」は今でも胸が躍り出すワードのひとつにございます。

 

宝さがしでもするような、一緒に悪いことをするような、不思議な背徳感を抱かせるけども子供心を擽る言葉でございまして、それが懐かしく、だけどもう決して聞くことができないのだと思うと哀しくもなるワードでございます。

 

今月が祖父の命日にございます。

毎年、この時期になると祖父を思い出しては懐かしく、心がなんとも言えない寂しさにきゅんとなります。

 

そんな気持ちのまま、本日は書かせていただきました。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。

 

あまりにも懐かしく、色鮮やかで、もの悲しくなってしまいました。