にわか落語ファンの鹿吉です。
こんばんは!
落語が面白いと思うようになったのは本当に最近のことで、それまではまったく興味を持っておりませんでした。というのも落語を聞いていても意味が理解できずに、噺が脳を上滑りしていくような感覚だったからにございます。
(参照記事はこちら「男の悋気が笑いを誘うのさ」)
けれど「お直し」という落語をはじめて聞いたことをきっかけに落語の奥深さ、そして面白さに気付き、以来ずっと折に触れては落語を聞くようになりました。
自転車に乗りながらでも落語が聞きたいためにヘッドフォンまで買いました(笑)
見た目オシャレなヘッドフォンをして自転車を爆走させている私が突然ひとり笑い出す様はかなり滑稽な様子ではないか、と危惧しなくはないのですが、やめられません!
落語は面白いのでございます。
そんな私だからか、最近やたらと元ネタが落語の舞台やドラマを目にするようになりました。
空前の落語ブームだと、先日聞いていた落語でも噺家さんが仰っていまして、以前だったら考えられないくらいの若い女性が噺家の出待ちをするようになったと驚いておりました。
もっとも目当ては若手の二枚目だそうでございますが……
先日も「応挙の幽霊」を元ネタにした喜劇を見付けました。
応挙の幽霊は有名な古典落語にございます。
かの有名な円山応挙が手掛けた幽霊画を中心に据えた話でして、5円で購入した幽霊画があまりにも素晴らしく、これは応挙の手だと言って90円で売っても売れると確信した男が主役でございます。
買い手が見つかり、手付金10円だけを受け取り、翌早朝に軸を持って残金を貰いに行くと約束した男が祝い酒をしながら、せっかくだからと幽霊画に酒と肴をお供えし、さらに線香まで焚いて供養をしたところ、喜んだ幽霊が軸から飛び出して男に礼を伝えるのでございます。
あまりにも喜ぶ幽霊が気の毒で、男は幽霊と一晩飲み明かしました。
気付けば買い手に軸を持って行く朝が訪れておりまして、男は焦った様子で軸を確認しましたが、なんとそこには儚げに世を恨む幽霊ではなく、へべれけに酔っぱらった幽霊がありました。
「どうすんだ?これを持ってはいけないぞ」
というオチだったような気がいたします。
実際に幽霊は応挙によって描かれたものでございまして、90円が150円でも売れる品物でございました。幽霊から応挙の手だと教えられた男が「しまった!本当に応挙の絵なら150円でも売れたのに!」と悔しがると「何を言ってるんですか!充分に儲けているじゃあないですか!」と幽霊から窘められるシーンもあったりして、なかなか面白い落語にございました。
そして本日おススメしたい落語は「はてなの茶碗」にございます。
実はこちらの落語も本日を初日として名古屋は御園座にて舞台となっているのでございます!
上方落語で「はてなの茶碗」、江戸落語では「茶金」という名で親しまれている古典落語にございまして、これもなかなか噺家としては腕が鳴るものだそうにございます。
というのも出てくるキャラクターが落語では珍しい気品のある、名家の方がおられますので、平民の油屋と時の帝や大阪の商人など、キャラクターの演じ分けが難しい演目でもあるのだとか。
是非とも「はてなの茶碗」を本日は楽しんでいただき、その後こちらの舞台を観に行ける方がおられれば行って欲しいな、と思っている次第にございます~(笑)
では「はてなの茶碗」の説明前に恒例の鹿吉ケーキラボの宣伝をさせてくださいませ!
食べ終わったあとのお皿まで舐めちゃう!という鹿吉のベイクドチーズケーキにございます!
こちらは日々変化する味わいを楽しんでいただける焼菓子にございまして、是非とも一度は召し上がっていただきたい!と思う一品でもございます。
もちろん無添加にて焼き上げております。
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さてそれでは「はてなの茶碗」をどうぞお楽しみくださいませ~♪
京都は東山にある清水寺の音羽の滝。
そのすぐ近くの水茶屋で油を振り歩く行商人の男(油屋)はお茶を飲んでおりました。
するとそこへ清水参詣に訪れた京都では有名な茶道具屋の金兵衛が油屋と同じように水茶屋で一休みを始めたのでございます。金兵衛は日本一の目利きとも言われておりまして、金兵衛が手に取り「はてな?」と首をひとつ傾げるだけで100両の価値があると言わしめるほどにございました。茶道具屋の金兵衛だから「茶金さん」と親しみを込めて呼ばれておりますが、そこは当代随一の目利きだけに、茶金が出入りする先は関白さんなどの高貴な名家があったりいたしました。
そんな茶金が油屋の横で、水茶屋の安い茶碗を手に「はてな?」と何度も首を傾げたのでございます。
ひとつ傾げれば100両の値打ち、それを六つも傾げたのですから油屋は驚きました。
清水焼の数茶碗で、油屋が見てもそこにどんな値打ちがあるのかすらわからない、ただの使い古しの安茶碗にございます。けれども茶金が「はてな?」と首を傾げた数だけでいえば600両の値打ちもの。
これは是が非でも手に入れて儲けたい!と思った油屋は渋る水茶屋の主を脅してでも買い取ることに成功しました。
その金額は財布にあるだけの有り金2両。
手に入れた茶碗をそれらしい箱に詰め、道具屋の手代に扮した油屋は意気揚々と茶金の店へと行きました。そして茶金の店の番頭さんに茶碗を見せて買い取るように言ったのでございます。
ところが茶碗を見せた番頭さんに「こんな安茶碗になんの値打ちもありはしないよ」と馬鹿にされ、油屋は怒り心頭、店先で番頭さんに喰って掛かりました。
その騒ぎを聞きつけた茶金が奥から出てきて事の次第を問いました。
油屋が持ち込んだ茶碗を番頭さんが茶金に示せば
「これはやはり安茶碗だ」
と茶金に断言され、油屋は茶金にも喰って掛かります。
これが安茶碗ならなぜ清水の水茶屋で首を傾げて見ていたのだ、と訴える油屋に茶金は納得した様子で
「あれはヒビも割れも傷もないのにぽたぽたと茶が茶碗から零れるのが不思議で見ていたんだ」
と説明をしました。
話を聞いてがっくりと項垂れる油屋が気の毒になった茶金は「私の名前ひとつに2両もの値打ちがあると買ってくれたのは商人冥利に尽きる!私がこれを3両で買い取りましょう」と油屋から安茶碗を引き取りました。
この話を茶金は後日、出入りしている関白さんの屋敷で話しました。
すると関白さんが「一度その茶碗を見てみたい」と仰せられ、茶金は関白さんの前で茶碗に水を入れてぽたりぽたりと落ちる様を見せたのでございます。
すると関白さんは
「清水の 音羽の滝の音してや 茶碗もひびに もりの下露」
と優雅に詠んだのでございます。
それがまた評判となり、時の帝の耳にまで入りました。そしてやはり帝までもが水が滴る茶碗を見たがり、茶金は茶碗を見せることになりました。
実際に傷もヒビもない茶碗から水がぽたりぽたりと滴る様を見た帝が「波天奈」と箱書きをしてしまったのでございます。
それを耳にしたのが大阪の鴻池善右衛門。
これは是非ともいただきたい!と茶金のもとへ馳せ参じ、なんと千両で茶碗を買い受けたのでございます。
茶金は油屋を探し出すと、事の次第を伝え、千両で売れたからと半金の500両を手渡しました。
油屋は大喜びで帰っていきました。
数日後、茶金の店先が随分と騒がしく、何事かと出てみれば、店前にやたらに重そうな荷物を抱えた人々がおりました。
その人々の前で音頭を取っているのはあの油屋でございます。
いったいこれはどういうことだと油屋に問いかけた茶金に、油屋は胸を張って叫びました。
「茶金さん、これで十万八千両の儲けでっせ!」
「いったいなんのことですか?」
呆気に取られる茶金を構うことなく油屋は言ったのでございます。
「水瓶の洩るやつ、ようけい見付けてきたんでっせ!!!」
おあとが宜しいようで……(笑)
本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました~♪
またいらしてください~♪
お待ちしております!!!
そして松平健さん主演の舞台「伊之吉の千両茶碗」も是非是非宜しくお願いいたします~!!!