先日、パーソナルトレーニング中にお客様からこんなご質問がありました。
「体質的に、筋肉が付きやすい人と、付きにくい人は本当にいるんですか?」
筋肉が付きやすい人は実際にいて、遺伝的な要因は強く、ホルモンバランス、年齢、性別、栄養と睡眠の質も大きく影響します。
パーソナルトレーナーになって23年が経ちますが、今まで見てきた中でお客様やトレーナーで実際に筋肉が付きやすい人はいましたが、ごく稀です。
筋肉が付きやすい・付きにくいという問題は、単純に生まれ持った体質によって決まっているというような話だけに片付けられがちですが、多くの場合、体質というよりは他に原因があることの方が多いです。
筋肉が付きやすい・付きにくいという問題の実際のところは、ほとんどの場合生まれつきや体質の問題というよりは、栄養や休息、そして集中力や継続力はもちろんのこと、『トレーニングの上手さ』が筋肉の付きやすさに大いに関係していることが多いのです。
ジムで、身体が大きい方や筋肉が綺麗に付いている方は総じてトレーニングが上手く、フォームが綺麗で軌道に無駄がなく、重りをコントロール出来ていて対象とする筋肉に正しく負荷を与えられるので、筋肉が付きやすいのです。
反対にトレーニングが下手な人は、正しいフォームで行えておらず軌道が不安定で、重りをコントロール出来ていないので対象とする筋肉への負荷も分散してしまうため、筋肉が付きにくいのです。
例えば同じ体格で、トレーニングが上手い人とトレーニングが下手な人が同じ重量と回数でベンチプレスを行ったとします。
トレーニングが上手い人は胸への負荷を100%与えられますが、トレーニングが下手な人は胸への負荷を50%しか与えられず、同じ時間をかけていても筋肉が付くスピードに倍の開きが出てしまいます。
トレーニングが上手い人はポイントを押さえているので更にトレーニングが上手くなっていき、努力した分しっかりと筋肉が付いていきます。
トレーニングが下手な人は、下手なままだといくら毎日時間をかけて努力をしても、努力の方向が適切ではないので筋肉は付きにくく、トレーニングが上手い人との差はさらに開いていくのです。
前述したように栄養や休息も大きく関係してきますが、これが筋肉が付きやすい・付きにくい問題の実際のところだと思います。
毎日ジムに来てトレーニングの頻度も高く、費やしている時間の割に体の変化がない、重い重量を扱っていてるのになぜか筋肉が付かないという方は、このパターンに陥っていることが多いと思います。
正しい方法で努力をしていても筋肉が付くには時間がかかるのに、間違った方法で続けていたらいつまで経っても筋肉は付かないのです。
ただ、よく勘違いしてしまいやすいのは、自分は運動神経が悪いから筋肉は付かないだろうと決めつけてしまったり、悲観する必要はありません。
筋肉を付きやすくするために必要なことは運動神経ではなく、トレーニングのポイント・筋肉を付けるためのポイントを理解することが大切なので、それを理解出来ていれば誰でも次第にトレーニングは上手くなっていくのです。
ということで、トレーニングが上手い人は何が出来ていて、何を意識しているのかをざっと5つの項目にまとめてみました。
①フォームと軌道
②フォームの再現性
③動作スピードのコントロール
④ストリクトとチーティングの理解と使い分け
⑤フル可動域・固定と稼働
ちゃんとトレーニングを行っているのになかなか筋肉が付かない、身体が大きくならないという方は、解決の鍵となるポイントが見つかるかもしれないので、一つずつ見ていきましょう。
①フォームと軌道
トレーニングが上手い人は、フォームが一定で軌道や動きに無駄がないため、重量に対して自分のパワーを効率良く伝えられると同時に、対象筋への負荷もロスなく与えることが出来ます。
→フォームが不安定だとウエイトの軌道もがズレるため、元の正しい軌道に戻すときにも力のロスが生まれてしまうので本来使えるはずの力をフルに発揮出来なくなってしまい、重量も上げにくくなります。
対象とする筋肉への負荷も、フォームが不安定なせいで負荷も半減してしまうため、効率も悪いです。
フリーウエイトで、バーベルやダンベルを地面に対して垂直に動かせる人は筋肉が付きやすく、軌道がブレながら動かす人は筋肉が付きにくいので、鏡を見て正面から自分のフォームを確認するのはもちろんのこと、横からもう1人の自分がフォームを俯瞰で見ているようにイメージし、自分が常に正しいフォーム・軌道で行えているかを意識出来るかがポイントです。
②フォームの再現性
トレーニングが上手い人はフォームの再現性が高く、対象とする部位へ負荷を乗せることが上手いので筋肉への負荷のロスがなく、同じ動作を繰り返せるので対象とする部位に負荷を分散させずに効かせることが出来ます。
→①と重なる部分がありますが、例えばサイドレイズを再現性高く同じ動作を繰り返せることが出来ると、水滴を一点に集中し続ければ岩をも削ることが出来るように、ピンポイントに三角筋だけに負荷を蓄積させられるので、効率良く筋肉を付けることが出来ます。
動作や軌道の再現性が低いと、同じ種目を行っていても負荷があちこちに分散してしまい、筋肉へ正しく負荷を伝えられないのでトレーニングの効率が悪くなってしまいます。
③動作スピードのコントロール
トレーニングが上手い人はウエイトを扱うスピードやリズムが一定で、ネガティブ動作(負荷に耐える動作)を特に意識的にコントロールして効かせています。
→トレーニングが下手な人は、ウエイトを下ろす動作のときに力を抜いてしまったり、ガチャガチャとコントロールせずに早く動かしがちです。
耐える動作は、バーを上げる動作に比べておよそ1.4倍強い力を発揮することが出来るので、特に耐える動作をゆっくり行うことで筋肥大の効率が上がります。
また、終始一定のリズムでウエイトをコントロール出来れば負荷も抜けず、筋肉へ効率よく負荷を与えることが出来ます。
他にも、ウエイトを上げる際に初動で勢いをつけ過ぎると、筋肉への負荷は抜けてしまいます。
④ストリクトとチーティングの理解と使い分け
トレーニングが上手い人は慣性や反動の使い分けを理解出来ていて、時にはストリクトな動作で対象とする筋肉だけを使い、反対にチーティングを使って追い込んだり重量を扱ったりと使い分けることが出来ます。
→筋肥大に重要なポイントは軽い重量をいかに重く扱うかです。これを理解しているとしていないのでは、筋肉を付けるために天と地の差が出ます。
筋肉への負荷が抜けないようにゆっくりコントロールする行うのが、筋肥大に有効な身体の使い方です。
反対に、重りを慣性で上げてしまったり反動を使いすぎてしまうと筋肥大に適さない身体の使い方になります。
慣性や反動を使い過ぎると負荷が抜けたり分散してしまうので、効率よく筋肥大をさせるにはいかに対象とする部位だけを使えるかが重要なポイントになります。
例外として、上がらなくなってからチーティングを使って追い込んだりするのは有効ですし、過度にストリクトを意識しすぎても重量を扱えずデメリットにもなるので、どちらも理解して場面によって使い分けることが大切です。
⑤フル可動域・固定と稼働
トレーニングが上手い人はフルの可動域で動作を行っていて、動作をする上で固定すべき筋肉と稼働すべき筋肉の使い分けを理解出来ています。
→怪我や可動域の制限がない限りはフルレンジで動作を行い、筋肉を最大伸長から最大収縮させたほうが仕事量も増えるため、筋肉への負荷が大きくなり柔軟性も向上します。
筋肥大に一番重要なポイントは筋肉が伸びている局面で、この筋肉がストレッチされる局面にこそ筋肥大を引き起こす物質が分泌されるので、動作はフルレンジで大きく動かすことが最大のポイントです。
可動域が少ないパーシャルレンジで行ってしまうリスクとしては、効率が悪いのはもちろん、負荷がかかる局面とかからない局面で筋肉への負荷に差が出てしまうため、怪我やアンバランスに繋がる恐れがあります。
マシンや腹筋などで、小刻みに動かしている方を見かけますが、やった感や満足感は得られるかもしれませんが時間に対しての効率は非常に悪く、労力に対する効果も薄いです。
強度や効果が薄いが故に、延々と回数もセット数も出来てしまうのです。
フルの可動域で扱えない重量は自分の筋力に見合っていない重量なので、見栄えや満足感はあっても実際の筋肉への負荷は少なく、これも効率が悪いので、可動域が取れないぐらい重いのであれば潔く重量を落としましょう。
重量を挙げられれば筋肉が付くと勘違いしているかもしれないのですが、それは「正しい可動域」と「正しいフォーム」という条件を満たしていなければ、ほぼ無効です。
無理な重量は怪我を招き、怪我をすればトレーニングも出来なくなり大きなロスになりますし、怪我の種類によっては後々何年にも渡って痛みや恐怖がついて回るので、重ね重ね効率が悪いです。
固定すべき筋肉と稼働すべき筋肉の使い分けも重要で、ラットプルダウンで床と平行になるぐらい後方に倒れてしまっている人をたまに見かけますが、それでは全身の体重を後方に移動させているだけで、一番使いたい広背筋はほぼ稼働せず、いくらやっても背中は大きくなりません。
同じようにアームカールで腕はほぼ90度のままで身体を前後に大きく振ることでウエイトを上げている人を見かけますが、同じくいくらやってもそれでは筋肉は付きません。
これも、固定させるポイントと稼働すべきポイントを理解していないが故に陥りやすい、非効率的なトレーニングの一つです。
プリチャーカールで、腕を伸ばす局面でお尻が上がり腕を曲げる局面でお尻が下がる、ライイングエクステンションで、肘を曲げる局面でお尻が上がり、伸ばす局面でお尻が下がるシーソーのような動きになってしまうと、負荷を逃しながら重りを移動させているだけなので、これも効率が悪いです。
以上、これがトレーニングが上手い人、筋肉が付きやすい人が意識しているポイントです。
ざっと書くつもりでしたが、筋肉が付きやすくなるための重要なポイントが山ほどあるので、ボリュームが多くなってしまいましたが、逆を言えば筋肉を効率良く付けるにはこれほど意識しなければいけない項目が多いのです。
改めて、トレーニングをしてどんどん身体が変わっていく人と、毎日ジムに来てトレーニングをしてるのに身体が変わらない人の差は、このようにトレーニングをしていく上で理解しておくべき重要なポイントを知らないが故に、無駄な努力を積み重ねてしまっていたり、間違った強いクセがついてしまっていることが原因にあります。
1日の中でトレーニングに捻出できる時間は限られていますし、トレーニングが行える体力にも限りがあるので、その中でいかに無駄なことをせず、余計な遠回りをしないで効率良くトレーニングをするためには、このように最低限知っておきたいことがいくつもあるのです。
これに気が付いた人、理解が出来た人は筋肉が付きやすくなり、必ずマッチョになれるはずです。
自己流だったり、何も考えずに丸腰の知識で闇雲にトレーニングをしていてはいくら努力しても身体は変わらないので、正しい方法や知識を学び、頭を使いながらトレーニングをすることが大切です。
その上で栄養や休息、基本種目と呼ばれるベーシックなトレーニングをやり込み、前述したトレーニングの基礎や基本的なテクニックを習得することこそが、デカくなるための王道で最強のトレーニング方法なのです。
せっかくトレーニングをするなら、正しい方法を学び、正しい情報を取り入れ、正しい方向へ努力をして、効率よく筋肉を付けた方が良いので、無駄な遠回りをしないように、プロの指導を継続的に受けて、計画的に身体を変えていきましょう。



