久しぶりに、声優のTちゃんと会った。
彼女はアニメ、ゲームはもとより、洋画の吹き替えやテレビ番組でのナレーションもこなす大ベテラン。
そもそもは、大昔に、私がNHKのアニメをプロデュースしたときに演じてくれたご縁。

大ベテランだけに、子役から大人まで、ときには動物の声も演じるようだけれど、最近のアニメ業界は昔とはずいぶん違うとのこと。

たとえば。

昔は「主役」は大抵、ベテランの声優さん〔男性〕で、収録が終わると「飲みに行くぞ!」と声がかかり、居酒屋で反省会となったり、先輩の指導があったりして、学ぶ機会が多かったという。

ところが、最近は、主役が若い人であることが多く、収録後は誰も飲みに行かない。

声の質や声の出し方はみんな同じで、「大衆ウケする周波数」を専門学校で徹底的に教えるからなのだそうだ。

しかも、顔がよくないと仕事が来ないこともあり、実際に彼女もオーディションで「最後のふたり」まで残ったのに、決まったのは19歳の新人、ということもあったそう。

「悔しくない?」と聞いたら、「若い人が頑張るのはいいことだ」と、くったくない。

昔は「すごく素敵な声なのに、実際はブサイクなおっさん」というような個性派声優も少なくなかったけれど、いまは個性派は減っているらしい。

しかし、声優に定年はなく、90歳を過ぎて、車椅子で仕事をしている人もいるというから驚いた。

あの、国民的ロングランのアニメなどは、役者さんが高齢化に伴い、亡くなる方もいて、配役は徐々に徐々に若返りを図っているのだとか。

元気な少年役が多い彼女が、これから取り組みたい役は、なんと老女だそうで、老女には魅力がいっぱい詰まっているらしい。

私はといえば、アニメはほとんど見ないし、もちろんゲームもやらない。洋画や外国ドラマは英語で観るので吹き替えは聞かない。
だから、彼女の仕事ぶりはまったくわからないという失礼千万なのだけれど、仲良くしていただけているのは、古い古い絆のおかげ。絆じゃなくて疵かもしれないけれど。

若い人たちに言いたいことは、若いときに一緒に苦労した人は、あとあと、年をとってから、一生の友達になるかもしれないよっていうこと。

若いころ、がむしゃらに頑張って過ごすと、それが10年も20年も、ときには30年もたって、すごーく面白く、成熟するってこと。